なぜ先発出場が少なくてもファンの人気者? “ブンデス最強ジョーカー”が大事にしていること

正しいことを口にするのを恐れないペーターセン、正直な一面もファン愛される要素に

 現在フライブルクは28節終了時で5位だ。UEFAヨーロッパリーグ(EL)、あるいはそれこそUEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場の可能性もある位置につけている。この強さの秘密はどこにあるのだろう。

「今季クオリティー的にもいいサッカーをすることができている。多くの選手がこのクラブでクリスティアン・シュトライヒの下でプレーして生きている。それが今、還元されていると思うよ。ライプツィヒとかレバークーゼンというクラブと競り合えているというのは素晴らしい気持ちだ。彼らが僕らを警戒して、僕らと比較しているんだから。少し前まではフライブルク戦は前期後期で勝ち点4を取るべき相手という対象だった。シーズン前には僕らのことを降格候補に据えていた専門家だっていた。いまやフライブルクに来るクラブは僕らへのリスペクトを持っている」

 ペーターセンはプレー面だけではなく、正直な人間で、正しいことを口にするのを恐れないところもファンから愛される要素の1つ。地元紙のインタビューではウクライナ情勢についても毅然としたコメントを残している。

「自分たちが日常生活でちょっとしたことに文句を言っていることを恥ずかしく思う。今日はよく眠れなかったとか、食事で少し待たされたとか。そんなの世界のほかの場所で起こっていることと比較することもできない。それも自分たちの世界からそうは離れていないところで起こっていることなのにね。すべて僕らの近くでの話だ。フライブルクにもウクライナからの難民が来ているんだ。

 今どのクラブも関心を持って取り組んでいるのはいいことだと思う。ファンも選手も一緒になっていく。フライブルクでは上手く回っている。いろんな人が自分たちの日常とは違う環境にいる人たちのためにできることを考えたり、そのことを話したりしている。そして僕らには僕らの日常がある。スタジアムから笑顔で帰ったり、喜んだりすることがあるのが悪いわけではないんだ」

 今、自分たちにできることと真摯に向き合って、勇敢にチャレンジをし続ける。助け合い、苦しい時は支え合い。そうやってプレーしてきた。そうやって生きてきた。これからもそうなのだろう。ペーターセンのコメントにはそんなメッセージ性がある。自分が持っている時間と環境を大事にしよう。

「もし今季7位で終わったら不満があるのかというと、それも分からない。達成できなかったら残念だよ。でもそれならそれで、そこからの道を見つけるだけだよ」

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)



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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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