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「すべてはロシア次第」 ウクライナサッカー連盟広報、不透明な将来に苦悩告白「選手も戦いに加わっている」
【インタビュー】ウクライナサッカー連盟広報マズニチェンコ氏が明かす現状
ロシアがウクライナへの侵攻開始から約1か月が経った。日常からサッカーなどスポーツが消え、侵攻の影響でスコットランド代表とのカタール・ワールドカップ(W杯)欧州予選プレーオフが6月に延期となるなか、ウクライナサッカー連盟広報担当のユーリ・マズニチェンコ氏が同国サッカー界の現状と不透明な未来を語ってくれた。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
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◇ ◇ ◇
首都キエフのウクライナサッカー連盟本部は現在医療目的に使用されており、西部の都市ウジホロドに戦時下のコーディネーションセンターとして移転しています。
国際サッカー連盟(FIFA)はウクライナリーグの選手に対して、他国のクラブでこの半年間、移籍できる特例を出しました。選手は安全な環境で練習や試合、準備を進めることができています。
ウクライナの代表選手の多くは、この戦いでボランティアや寄付という形でこの戦いに加わっています。現役選手や引退選手でも銃を取り、防衛軍に参加している人もいます。防衛軍や志願兵となった選手はプレーできるコンディションにないかもしれません。
ユースの選手や育成年代の選手に関しても、連盟では欧州サッカー連盟(UEFA)と連携し、子供たちを第三国でトレーニングを積み、無事を確保するための活動を続けています。
ウクライナにフットボールはいつ戻ってくるのでしょうか? すべてはロシア次第です。プーチンがいつまで我々の都市を攻撃しているのか。我々としては国を防衛するしかない。侵攻してきている相手の行動は予想できません。
FIFAはW杯最終予選のスコットランド戦を6月に延期しました。ですが、この戦いが6月までに収束を迎えるのか、見えません。6月の段階で、FIFAがウクライナ代表に国際試合を開催できるという判断を下すのかも分かりません。
戦時下のサッカー界ではとても残念なことが起きました。長らくキャプテンを務めたアナトリー・ティモシュチュクのことです。彼はロシアのゼネトというサッカークラブでアシスタントコーチとしての仕事を続けています。
この状況になって、何一つ発信がありません。ソーシャルメディア、メディアを通じてゼロです。ワシル・ロマチェンコ(ボクシング元世界王者)、オレクサンドロ・ウシク(同ヘビー級世界王者)、アンドリー・シェフチェンコというスポーツ界の英雄たちはこの侵攻に反対する立場を明確にしています。
この状況で、ティモシュチュクは声を上げません。ウクライナに対する裏切り者であることを、我々の国民もサポーターも理解したのです。自分の母国が侵攻されているにも関わらず、何一つ声を上げようとしない。それは明確な裏切りです。
連盟はコーチングライセンスの剥奪、代表チームからの除名、ウクライナでの活動禁止など重いペナルティを課しました。国民もサポーターもこの処分を正当で妥当だと考えています。彼はキャプテンで、ウクライナ代表最多キャップ(144試合)を誇っていた選手であるのですが、国民感情としては2度と見たくないという気持ちでしょう。
ティモシュチュクへの処分を受けて、現在はシェフチェンコがウクライナで最もキャップ数(111試合)を重ねている選手になりました。
ロシアの侵攻が続く状況では、フットボールは続けることはできません。1日も早く平和な日々が戻ってくることを祈っています。
ユーリ・マズニチェンコ(Yuri Maznychenko)/37歳、キエフ出身。2007年からスポーツ記者として活動。12年にウクライナサッカー連盟の職員に。広報担当を務める。現在はキエフに留まり、自らのブログメディア[ftp_del] https://teletype.in/@yumatory[/ftp_del]を立ち上げた。ロシア侵攻とウクライナ情勢を現地で伝える傍ら、戦火で取材を続けるジャーナリストのために支援を呼び掛けている。
(FOOTBALL ZONE編集部)