“緊急事態”の横浜FMが引き寄せた「運」 痛快な逆転勝利…優勝争う川崎に重圧与えたか

川崎フロンターレとの優勝争いを演じる横浜F・マリノス【写真:Getty Images】
川崎フロンターレとの優勝争いを演じる横浜F・マリノス【写真:Getty Images】

【識者コラム】主力CB2人を欠いた広島戦、偶発性の高いゴール3連発で逆転勝利

 先日、育成の達人と呼ばれる指導者に話を聞く機会があった。

「サッカーは70%以上が運」

 それが持論だった。

「ロシア・ワールドカップでもフランスが優勝したのは運以外の何ものでもない。別にクロアチア、ブラジル、ベルギー……どこが勝ってもおかしくはなかった」

 しかし彼は、ピッチ上のパフォーマンスを運任せにしているわけではない。世界に出ても「ここから先は運次第」というトップグループに入るための“必然”を、ずっと追求してきた。

 今年のJ1リーグなら、優勝争いは川崎フロンターレと横浜F・マリノスに絞られている。この達人の発想なら、最後にカップを手にするかどうかは「運次第」になるのかもしれない。そしてそういう意味では、横浜FMのサンフレッチェ広島戦(アウェー)の勝ち方は自らに弾みをつけ、相手には絶望的なダメージを与えるものだった。

 横浜FMの選手層はJ1屈指だ。だが最も代えが効き難いのがチアゴ・マルチンスと畠中慎之輔のセンターバック(CB)コンビで、広島戦は一気にこの2人を欠いていた。特に畠中のほうは半年間の離脱が発表されている。しかもチームは快進撃でせっかく首位の川崎に勝ち点1差まで肉薄したのに、天敵の鹿島アントラーズに今季連敗を喫して再度差を広げられていた。つまり戦力的にも苦境に立たされ、連敗を避けるためにも真価を問われる試合に直面することになった。

 8月にチームに合流し、いきなり月間最優秀監督に選出された横浜FMを率いるケヴィン・マスカットも、さすがに「厳しい試合になる」と考えていた。前節の広島は、ヴィッセル神戸を相手に10人になりながら先制し、1-1の引き分けに持ち込んでいたからだ。

 実際に試合は序盤から前がかりに出た広島に主導権を握られた。開始8分には、左サイドに開いた土肥航大を起点にした攻撃で先制を許した。結局土肥は前半23分に故障で退いてしまうのだが、広島の城福浩監督も「それまでは相手に何もやらせていなかった」と会心の入り方ができたと振り返っている。

 ところが横浜FMは非常に偶発性の高いゴールを3連発して、あっさりと引っ繰り返し主導権も手繰り寄せてしまう。同点ゴールはマルコス・ジュニオールのミドルシュートが、前田大然の足に「当たっただけ」で角度を変えてネットを揺すった。逆転弾はCBの代役として抜擢された實藤友紀が、CKを直接オーバーヘッドの体勢からヒールで合わせるように叩き込む。そしてダメ押しになる3点目は、欧州シーンでも滅多に見られないようなレオ・セアラのスーパーFKが突き刺さった。

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加部 究

かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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