EURO最注目の「シンデレラストーリー」 27歳“遅咲きアタッカー”にドイツが熱狂
【ドイツ発コラム】アタランタで飛躍したドイツ代表MFゴセンス、ポルトガル戦で3ゴールに絡む大活躍
ビッグトーナメントでは、シンデレラストーリーがつきものだ。
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ある試合の爆発的なパフォーマンスをきっかけに一気に世間の注目を集め、そこからどんどん階段を駆け上っていく選手がいる。今回の欧州選手権(EURO)に出場しているドイツ代表では、MFロビン・ゴセンスがまさにそんな選手になるかもしれない。
現在イタリア・セリエAのアタランタでプレーする27歳のゴセンスは遅咲きだし、そのキャリアの歩み方は他のプロ選手と比べてかなり独特だ。これまで一度も年代別代表に選出されたこともなければ、ブンデスリーガの育成アカデミーに所属した経験もない。ドルトムントのトライアルを受けたことがあるが不合格。
「僕の人生における最大のチャンスだと思って臨んだんだけど、どのパスも5メートルずれたり散々だった」(ゴセンス)
17歳までアマチュアクラブでプレーしていたゴセンスは、オランダのフィテッセからスカウトを受けU-19チームでプレー。その後、15年に20万ユーロでヘラクレス・アルメロへ、そして17年に117万ユーロでアタランタへ移籍。そこでブレイクし、チーム内でレギュラーを獲得。チームは3年連続UEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場を果たし、2019-20シーズンはベスト8進出、今季も決勝トーナメント進出を成し遂げている。
決して大きなクラブではないアタランタが、欧州最高峰の舞台で輝かしい成功をあげ続けているのはサッカー界にとっても素晴らしい話だ。そのなかで主力として活躍しているゴセンスなのだが、いかんせんドイツ国内では知名度が低い。
そんな彼のもとにドイツ代表監督ヨアヒム・レーブが電話をかけてきた時の逸話が、ドイツメディアで紹介されていた。
運命の電話が鳴った時、ゴセンスは恋人と車で休暇へ向かう道中だった。携帯のモニターに映ったのはヨアヒム・レーブの名前。
「ちょうどトンネルに入る前だったんだ。『え、これ電話を受けて、トンネルで電波が切れちゃったらどうしよう?』とかいろいろなことを一瞬で考えた。すぐにハザードボタンを押して、車を路肩に止めることにしたんだ」
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。