細身の“魔術師”を変えた12年前の転機 スコットランド弱小クラブでの苦い体験とは?

シティFWリヤド・マフレズ【写真:Getty Images】
シティFWリヤド・マフレズ【写真:Getty Images】

【英国発ニュースの“深層”】マンCで輝きを放つマフレズ、2009年にセント・ミレンのトライアルに不合格

 スコットランドの1部リーグ、スコティッシュ・プレミアシップは、中村俊輔(現・横浜FC)が所属したセルティックと、そのライバルチームのグラスゴー・レンジャーズの完全なる2強体制で、それ以外のチームのクオリティーは正直、英2部リーグのチャンピオンシップのチームに劣る。

 ましてや下位チームとなれば、その実力は推して知るべき。その中には今季のスコティッシュ・プレミアシップの12チーム中7位に終わったセント・ミレンも含まれる。

 かたや、アルジェリア代表FWリヤド・マフレズといえば、2015-16シーズンに17ゴール10アシストの成績を収め、ブックメーカーの5001倍オッズでも知られた奇跡のレスター優勝に貢献。この年、プレミアリーグの最優秀選手賞となるPFA年間最優秀選手賞を受賞した。ちなみにこの時、初のアフリカ人選手の受賞となった。そして2018年夏にジョゼップ・グアルディオラ監督が率いるマンチェスター・シティに移籍。フランス2部ル・アーブルから45万ポンド(約7200万円)で買い取ったマフレズを6000万ポンド(約96億円)で売却した移籍としても大きな話題になったが、以来プレミア王者チームの主軸としても堂々たる活躍を見せている。

 時間をさかのぼること12年前。2009年1月、そんな100億円級の大選手となったマフレズが、スコットランドの弱小セント・ミレンのトライアルに落ちていた。

 英公共放送「BBC」が報じたところによると、当時フランスからマフレズを呼び寄せ、セント・ミレンのトライアルを受けさせて、実質的な代理人の役割を果たしたジェイク・ダンカン氏はこう言う。

「フランスにいるスカウトから『素晴らしいテクニックを持った少年がいる』と聞いて呼び寄せたのがマフレズでした。その時に通常、身長や体重等、トライアルを受ける少年の簡単なプロフィールを作るのですが、その備考欄に『もっとポリッジ(スコットランドの典型的な朝食となるオートミール)を食べるべき』と記しました」

 今でも細身のマフレズだが、当時はかなり細く、その点が当たりの強い英国サッカーの代理人に不安視されたのがよく分かる。

 またトライアルを担当したセント・ミレンのアカデミー監督だったデイビッド・ロングウェル氏も、「リヤドは当時まだ本当に少年の体で、成長し切っていませんでした」と語る。しかし、1月の極寒のスコットランドで、室内のピッチ上で5対5のミニゲームにマフレズが参加し、ボールを持つと「相手チームの少年たちを翻弄して、見事に切り裂きました」と言って、この時点から素晴らしいボールコントロールの技術を見せたと証言した。

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森 昌利

1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。

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