Jリーガーから国立大の准教授へ 元浦和MF、引退後の道を切り拓いた飽くなき探求心

「学生により良い環境を提供する取り組みこそ指導者の使命」

「日本がサッカー先進国になってほしいと願うが故の行動ばかりです。自分の指導には限界があるので、こういう研究や発信によって誰かが刺激を受け、アクションを起こしてくれたらいろんな可能性が膨らむ」

 監督就任2年目の08年、国公立13大学による関東甲信越大会で23年ぶりの頂点に立った。12年にはアミノバイタルカップ第1回関東大学トーナメントに出場し、1回戦で敗退したが優勝した早稲田大学に0-2と善戦。そもそも県予選を突破し、出場したこと自体が快挙だった。

 現在、埼玉県大学リーグ1部に属し、目標の関東大学リーグ2部昇格はまだ果たせていないが、肝心なのは今の環境が充実しているかどうかだと力説する。

「学生により良い環境を提供する取り組みこそ指導者の使命で、自分と関わった人たちの心が豊かになってほしい。教育って最もクリエイティブで、最も大変で、最も価値がある社会の基盤ですからね」

 なるほど。この言葉を聞けば菊原の天職はサッカー選手ではなく、高潔な職業従事者を例えて言う“聖職者”なんだと合点がいった。(文中敬称略)

河野 正

1960年生まれ、埼玉県出身。埼玉新聞運動部で日本リーグの三菱時代から浦和レッズを担当。2007年にフリーランスとなり、主に埼玉県内のサッカーを中心に取材。主な著書に『浦和レッズ赤き激闘の記憶』(河出書房新社)『山田暢久火の玉ボーイ』(ベースボール・マガジン社)『浦和レッズ不滅の名語録』(朝日新聞出版)などがある。

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