清水の新エース&“申し子”が復活 10戦ぶり勝利を呼び込んだロティーナ流の連動守備

清水FWチアゴ・サンタナ【写真:Getty Images】
清水FWチアゴ・サンタナ【写真:Getty Images】

【J番記者コラム】FC東京に3-0と快勝、10戦ぶり白星で今季ホーム初勝利

 2021シーズンが開幕して3カ月、15試合を終えた時点での清水エスパルスは2勝4分9敗の勝ち点12で暫定16位となり、直近9試合勝利がない(4分5敗)状況だった。もし、26日に行われたJ1リーグ第16節のFC東京戦で勝てない場合は、クラブ創立以来初のJ2降格となった2015年に記録した「10試合未勝利」のワースト記録に並ぶことになる。ホームゲームの勝利も昨年11月以来、リーグ戦では約6カ月間もサポーターに見せることができていない。

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 そうしたなかで迎えたFC東京戦。相手は5連敗の後の2試合で柏レイソルに4-0、ガンバ大阪に1-0と無失点で2連勝し、勝ち点21の11位と調子を戻し上位を窺う態勢を整えていた。また清水はFC東京に対し、ここ2年間勝利がなく、ホームでの白星は2008年まで遡らなければいけないほど苦手な対戦相手でもあり、試合前までは重苦しい雰囲気となっていたが……。

 試合が始まると、立ち上がりこそFC東京の勢いに押されたものの、徐々に清水がリズムをつかみ、前半14分に第14節の名古屋グランパス戦(0-3)から内転筋に強い違和感があり、前節の北海道コンサドーレ札幌戦(0-2)を欠場して治療に専念したFWチアゴ・サンタナが、DFエウシーニョのシュートのこぼれ球を押し込み先制。前半アディショナルタイム3分に、新しい守備の戦術に持ち味を生かし切れずにいたDFヴァウドがCKから今シーズン初得点となるヘディングシュートで追加点を挙げれば、後半4分には「ロティーナの申し子」ことMF片山瑛一が右ハムストリングス肉離れの長期離脱から先発復帰2試合目で移籍後初ゴールを決め、チームとしては開幕戦の鹿島アントラーズ戦(3-1)以来となる3ゴールを挙げた。守っては攻撃力を誇るFC東京を無失点に抑え、今シーズン初となる完封勝利を収めた。

 勝因は違和感が治まったチアゴ・サンタナが、前線で体を張ったプレーでタメを作れたこと。「どこでもポリバレントに高いパフォーマンスでプレーができる選手。我々にとって片山のいない2カ月間は複数のポジションで選手を失うような感覚だった」とミゲル・アンヘル・ロティーナ監督に言わしめた片山の攻守にわたる気の利いたプレー。そして、そのなかでも特に輝いていたのは2ボランチのMF宮本航汰とMF中村慶太だった。

 宮本のキャリアは7年目となるが、プロ2年目からの4年間は期限付き移籍でJ2チームに武者修行へ。昨シーズン、5年ぶりに清水に戻ったが、本格的に先発の主力としてJ1を戦うのは今年が初めてとなる。第8節の浦和レッズ戦(0-2)から9試合連続で先発出場を果たしており、ロティーナ監督の信頼を勝ち取ってはいたが、「守備」への意識が高い宮本はなかなか攻撃につながるボールを出せず、これまではバランス重視のプレーをしているように感じた。だが、この試合では積極的に前を向く場面が多く、チーム最多3本のシュートを放ったエウシーニョに次ぐ2本のシュートを放ち、数多くゴール前に顔を出していた。

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下舘浩久

しもだて・ひろひさ/1964年、静岡市(旧清水市)生まれ。地元一般企業に就職、総務人事部門で勤務後、ウエブサイト「Sの極み」(清水エスパルス応援メディア)創設者の大場健司氏の急逝に伴い、2010年にフリーランスに転身。サイトを引き継ぎ、クラブに密着して選手の生の声を届けている。

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