久保はボルダラス戦術の“犠牲者” ヘタフェ番記者、“残留決定弾”を絶賛「感動的ゴラッソ」

ヘタフェサポーターのホルヘさん【写真:高橋智行】
ヘタフェサポーターのホルヘさん【写真:高橋智行】

スペインメディアもチームを窮地から救った久保に軒並み高評価

 一方、多くの友人と来ていたアドリアンさんは、「タケ・クボはヘタフェの中でも、決定力を備えた選手だからスタメンに入れるべきだったと思う。彼は縦への突破力、シュート力、さらにラストパスの能力を備えており、特にマタやアンヘルというFW陣とともに非常に上手く機能することができたと思うよ」と、ベンチスタートが続いていることを残念がった。

 第37節は全試合同日同時キックオフ。勝てば最終節を待たずに残留の決まる可能性があるレバンテ戦は、曇り空ながら気温26度と暖かいなかでスタート。ボルダラス監督はメンバーをほぼ変えず、久保は5戦連続でベンチスタートとなった。

 ヘタフェは前半13分にMFカルレス・アレニャの先制点で幸先の良いスタートを切ったが、同30分に同点に追いつかれた。そして後半に入り、このまま引き分けで終わると他会場の結果により、残留の行方が最終節に持ち越されるという状況に陥っていた。

 これまで保守的な采配の目立ったボルダラス監督だったが、この日は違った。後半30分に久保、DFフアン・イグレシアス、そして負傷明けのFWクチョ・エルナンデスの3枚を同時投入するという思い切った策を取り、攻撃陣をリフレッシュし、強気で決勝点を狙いにいった。

 そして、この決断が見事に的中する。4-4-2の左サイドハーフに入った久保は同39分、相手GKダニエル・カルデナスがキックミスしたボールを拾うと、レバンテの右サイドバックを務めるDFホルヘ・ミラモンと対峙しながら巧みなコース取りでペナルティーエリアまでドリブルし、左足を素早く振り抜くと、強烈なシュートをニアサイドに突き刺した。このゴールは久保の今季リーガ初得点というだけでなく、ヘタフェを残留に導く価値ある1点となった。

ヘタフェを応援するアドリアンさん(写真中央)【写真:高橋智行】
ヘタフェを応援するアドリアンさん(写真中央)【写真:高橋智行】

 久保は試合後のインタビューで、急遽出番が訪れた理由について「僕がアップしている時、エルチェがリードしているという情報が届いたので、同点では価値がなくなってしまったんだ。そのためゴールを狙いにいく必要があった」と明かし、今季のリーガ初得点については「今季はビジャレアルとヘタフェで大いに苦しんできた。あのゴールは重要だったし、僕は今日、本当に嬉しいよ」と喜びを露わにした。

 最近は久保についての報道が少なくなっていたスペインメディアだったが、レバンテ戦後、ありとあらゆる言葉でヘタフェを窮地から救った19歳の若者を大絶賛した。

 スペイン紙「AS」は試合翌日の紙面で、「クボが残留を確定させた」と見出しを付け、「日本人選手のゴラッソがヘタフェの苦しみを終わらせた」「クボがこれまでほとんど見せられていなかったハイレベルなスーパーゴールを決め、ヒーローになった」などと伝え、この試合に出場した選手のなかで唯一の最高評価3点をつけた。

 スペイン紙「ムンド・デポルティーボ」も久保に対して、MFマウロ・アランバリと並ぶ最高の3点をつけ、「クボがレバンテ相手にヘタフェの残留を決めた。来季の1部リーグ継続を確実なものにする価値あるゴラッソを84分に記録した」と賛辞を送った。

 スペイン紙「マルカ」は「今冬のヘタフェの補強選手であるクボとアレニャが得点者となり、本当に重要な勝利を与えた」「面白味のない内容の後半のなかで、久保のゴールが唯一のハイライトになった。そしてこのゴールが、血と汗と涙を要した残留を祝うための熱狂をヘタフェのベンチにもたらした」と伝え、久保にチームトップの2点(最高3点)をつけた。

高橋智行

たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。

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