激震の清水で「端くれ」新監督が示したメッセージ “熱い気持ち”で呼び込んだ初陣の快勝劇

監督交代後、初戦で勝利を飾った清水エスパルス【写真:小林 靖】
監督交代後、初戦で勝利を飾った清水エスパルス【写真:小林 靖】

【J番記者コラム】平岡新監督の就任初戦で神戸に3-1快勝、チームは“強い気持ち”でまとまった

 ヴィッセル神戸とホームで対戦した3日のJ1リーグ第26節、その2日前に清水エスパルスは今シーズンのチーム改革を託して招聘したピーター・クラモフスキー監督との契約を解除し、クラブは平岡宏章コーチを監督に昇格させた。

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 平岡監督は清水商業高校(現・清水桜が丘高校)から順天堂大学を経て、Jリーグの“オリジナル10”として加盟した清水に1992年に入団。左サイドバックの「元祖ロングスロー」として、チームの創立から主力として活躍した。指導者としてはアルビレックス新潟のコーチを務め、2007年にはアルビレックス新潟シンガポール監督に就任。その後は清水ユースのコーチ、監督を経て、今シーズンからトップチームのコーチに就任していた。

 監督に就任して初めての会見では、コーチとして前監督を支えられなかったことを悔やんでいたが、「もう一度、強い時代のエスパルスに戻すために闘う集団を作りたい」と意気込みを語った。現役時代はDFだった平岡監督は、前節終了時点でリーグワースト54失点の守備の修正に着目。「選手の能力は決して低くない。ただ球際のところで丸いボールがどちらに転がってくるかといえば、もちろん技術やスキルもあるが、やはり技術よりも気持ちが強いほうへボールは転がると私は信じている」と語り、2日間しかない準備期間ではそこまで戦術は落とし込めなかったが、新監督の熱い気持ちは選手に伝わっていた。

 前節の柏レイソル戦(0-0)では2週間の練習時間を有効に使い、2試合連続の引き分けと、その内容は手応えを感じられるものだった。「さあ、残り9試合で巻き返しを」と思った矢先の監督交代だったが、さらにチームは強い気持ちでまとまり、それがこの試合でのプレーに表れた。

 基本的には前監督のサッカーを継承しながら、フォーメーションを「4-4-2」に変更。より各選手の仕事を明確にし、前線からのプレスを強め、何度も神戸ディフェンスにGKへのバックパスを余儀なくさせた。ボールを奪われても切り替えを早く、次々と神戸の選手へアタックを仕掛けてボールを奪い返した。前半に先制を許すも怯むことなく戦い続け、後半にCKからDFヴァウドのヘディングシュートで同点。逆転ゴールのDFエウシーニョの今シーズンの初得点は、まさにワクワクするゴールであった。そしてダメ押しの3点目は全得点でアシストを決め、ユース時代に新監督に指導を受けたMF西澤健太のFKからチームのムードメーカーであるDF金井貢史のゴールだった。

 3-1の今シーズン初の逆転勝利。怪我のために7試合ぶりに先発復帰したキャプテンのMF竹内涼が、ことあるごとに大きな声でチームを鼓舞すると声援ができないスタンドからは拍手が起こり、同じく選手たちを鼓舞した。この試合から太鼓などの鳴り物での応援が許され、サンバ隊が奏でるリズムがピッチにも届いていた。エウシーニョは「力をもらった」と話し、MF金子翔太は「心地良かった」とサンバのリズムとともに、強い清水エスパルスが戻ってきたのか……。

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下舘浩久

しもだて・ひろひさ/1964年、静岡市(旧清水市)生まれ。地元一般企業に就職、総務人事部門で勤務後、ウエブサイト「Sの極み」(清水エスパルス応援メディア)創設者の大場健司氏の急逝に伴い、2010年にフリーランスに転身。サイトを引き継ぎ、クラブに密着して選手の生の声を届けている。

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