サッカーの流行は「真似した頃には過ぎ去る」 南米で学んだ“正解に固執しない”重要性

正解を追うのではなく、状況に応じて正解を探し出せる選手が理想

 つまり指導法も育成法も答えは一つではない。ボカ・ジュニオルスを指揮して世界一に輝いたカルロス・ビアンチは言っていた。

「コンパクトな陣形を保てている間はレアル・マドリードの時間帯。でも敢えて間延びさせてしまえばボカの時間帯になる」

 結局ボカは、流行とは真逆の方法でタイトルを奪取した。正解に固執するのではなく、常に判断に余白を設ける。そこが肝だと、亘は思う。

「トレンドを逆撫でするように、ウチはこれでいいじゃん、と言い切れるチーム、あるいはそんな選手を作っていくことが大切だと思うんです」

 正解を追うのではなく、状況に応じて正解を探し出せる選手――。それがおそらく亘が描く「食べていける」プレーヤーの定義だ。(文中敬称略)

(加部 究 / Kiwamu Kabe)



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加部 究

かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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