「解任」妥当な惨敗も…森保監督が更迭されない理由 JFAはむしろ“責任を問えない”?
【識者コラム】A代表とは異なる五輪代表の強化方針 兼任の利点…柱はもう1本ある
U-23アジア選手権のグループリーグ敗退によって、森保一監督の解任論が浮上している。解任するにしてもA代表と五輪代表のどちらの任を解くのか、両方なのかも議論は分かれるところだろう。ただしJFA(日本サッカー協会)は現状維持の方針のようで、筆者もそれが妥当ではないかと思っている。
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U-23アジア選手権の結果と内容は、監督解任で不思議のないものだった。東京五輪で金メダルを狙うチームがアジアのベスト8にも入れず、グループ最下位では話にならない。ただ今回の場合、それが解任に結びつかず、むしろ解任できない状況なのではないかと推測している。
まず前提として、五輪代表の強化方針はA代表とは違う。これは主に、選手の招集に拘束力がないことからきている。A代表ならば、国際Aマッチデーの招集に拘束力があるが、年代別の代表にはそれがない。Jリーグは日本代表強化を謳っているので、選手の供出を拒否することは原則的にないだろうが、外国のクラブとなると事情は違う。そして現在は、五輪世代でも多くの「欧州組」が存在している。最悪の場合、欧州組を東京五輪に1人も招集できないことも理論上はありうるわけだ。
この前提条件から、五輪代表の強化は2本立てになる。
まず、準備段階および本番に招集可能な「国内組」の強化。こちらは主に横内昭展コーチが担当してきた。これが1本の柱。もう1本の柱は「欧州組」を中心に据えたものだが、こちらは強化試合に招集するのも簡単ではない。そこで、欧州組は拘束力のあるA代表として招集し強化していく。こちらは、A代表を兼ねる森保監督の担当になる。
U-23アジア選手権の惨敗で、その1本の柱が折れたと言っていい。
欧州組を思うように招集できない場合に主力となるチームだったが、それがアジアで惨敗では五輪本番では戦えない。こうなると、もう1本の柱に頼るほかないわけだ。欧州組の強化は、昨年6月のコパ・アメリカ(南米選手権)の時に集中的に行われていた。
大会後まもなく移籍した前田大然(マリティモ)、安部裕葵(バルセロナ)、三好康児(アントワープ)を含めると五輪世代の欧州組は8人いた。アジアカップに参戦したため、コパ・アメリカは欠席だった堂安律(PSV)、U-23アジア選手権で唯一の欧州組だった食野亮太郎(ハーツ)を加えると10人の欧州組が目下の候補だろう。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。