「静岡の歴史を変えた」 “王国”に24年ぶり歓喜、伝統の“静学スタイル”が呼んだ大逆転V

24大会ぶりの選手権制覇を果たし歓喜に沸く静岡学園の選手たち【写真:Noriko NAGANO】
24大会ぶりの選手権制覇を果たし歓喜に沸く静岡学園の選手たち【写真:Noriko NAGANO】

青森山田に0-2から逆転勝利、初の選手権単独優勝で4037校の頂点に立つ

 第98回全国高校サッカー選手権は13日、埼玉スタジアムで決勝が行われ、静岡学園(静岡)が青森山田(青森)に3-2で逆転勝ちし、24大会ぶり2度目の優勝を果たした。前回の栄冠は鹿児島実(鹿児島)との両校優勝だったため、単独での制覇は初。静岡県勢としても24大会ぶりの頂点となる。青森山田は第79、80回大会の国見(長崎)以来の2連覇はならなかった。

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 後半アディショナルタイム3分も過ぎ、タイムアップが近づく頃合いだ。静岡学園はMF小山尚紀が中盤で軽快に運び、左でパスを預かったMF草柳祐介がシュート。これで勝利は確実となった。直後に長い笛が鳴ると、就任11年目の川口修監督はコーチ陣と握手し、ベンチ入りメンバーはピッチになだれ込んで喜びを爆発させた。“サッカー王国”静岡が、復活への一歩を刻んだ瞬間である。

 1回戦から5試合続けて無失点で勝ち上がってきた堅陣が、前半11分にFKから、同33分にはPKでまさかの2失点。「前半は中盤の3人の距離が遠かったし、ボールを受けることを怖がってウチのサッカーができなかった」と指揮官は振り返る。

 0-2で前半を終えていたら、後半の逆襲・逆転は難しかったかもしれない。前半アディショナルタイム、FKからのこぼれ球をDF中谷颯辰が右足で蹴り込んだ1点が、どれだけチームに勇気を与えたことか。

 主将のDF阿部健人は、「前半に1点を返せば逆転できると信じていたので、あの1点が効いた」と感謝し、川口監督も「1点を取って落ち着けたし、もう一回行くぞという戦闘態勢に入れた」と2、3点に値するゴールだったと称賛した。

 後半16分の同点ゴールは、静岡学園の選手らしい高度な技術が生み出したものだ。草柳が左から運んで中央のFW加納大にパス。青森山田の大型センターバック(CB)であるDF藤原優大を背負いながら左足でトラップした加納は、ペナルティーエリアに持ち込んだ瞬間、左足を振り抜くとボールは絶対に阻止できないコースに吸い込まれた。これで2-2。

 テクニシャン集団は、消沈する青森山田を攻め立て、とうとう後半40分に決勝点をもぎ取る。小山のドリブル突破から中央やや左でFKを獲得。MF井堀二昭のキックを遠いポストから中谷がヘッドで合わせ、全国4037校の頂点に立つ、栄光のゴールを突き刺した。

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河野 正

1960年生まれ、埼玉県出身。埼玉新聞運動部で日本リーグの三菱時代から浦和レッズを担当。2007年にフリーランスとなり、主に埼玉県内のサッカーを中心に取材。主な著書に『浦和レッズ赤き激闘の記憶』(河出書房新社)『山田暢久火の玉ボーイ』(ベースボール・マガジン社)『浦和レッズ不滅の名語録』(朝日新聞出版)などがある。

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