「静岡の歴史を変えた」 “王国”に24年ぶり歓喜、伝統の“静学スタイル”が呼んだ大逆転V

静岡学園の川口修監督【写真:Noriko NAGANO】
静岡学園の川口修監督【写真:Noriko NAGANO】

川口監督は“先輩”に感謝 「個の育成を徹底し、その中で結果を出す指導が実った」

 CBながら2得点した殊勲の中谷は、「サッカー王国復活が目標だったので嬉しい。前半の1点がチームを勢いづかせたので大きかった。決勝点はニアに行くつもりでしたが、咄嗟の判断でファーに動いたら、めちゃくちゃフリーで打てました」と破顔一笑するが、「形式上は自分のゴールだけど、1人でも欠けていたら決まらなかった。全員の得点です」と仲間に謝辞を述べる。

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 近年の静岡県勢は序盤戦での敗退が続き、ベスト4以上に進んだのも2007年度の第86回大会で藤枝東が準優勝したのが直近の最高成績だ。“王国”の看板が色褪せていただけに、中谷のほかにも「王国・静岡」の復興に思いを寄せていた選手は多い。

 阿部は「静岡の歴史を変えられて良かった。地域の方々にも感謝したい」と誇らしげに語り、加納は「地元のパワーと誇りを持って戦い、静学のスタイルを全国に見せられた」と、喜びと安堵感が交錯したような表情だった。

 静岡学園の武器は選手が代わり、指導者が代わり、チームと時代が変わってもドリブルを主体にした個人技だ。この伝統がしっかり引き継がれていることを、今大会で明確に示した。

 46歳の川口監督は「技術を身に付け、それをピッチで使えるように教えるやり方は毎年変わらないが、今年のチームは飲み込みが早かった。(初代監督の)井田(勝通)先生の時から個の育成を徹底し、その中で結果を出す指導が実った。先輩たちの努力と苦労が報われました」と万感の思いで述べ、勝利の余韻に浸っていた。

(河野 正 / Tadashi Kawano)



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河野 正

1960年生まれ、埼玉県出身。埼玉新聞運動部で日本リーグの三菱時代から浦和レッズを担当。2007年にフリーランスとなり、主に埼玉県内のサッカーを中心に取材。主な著書に『浦和レッズ赤き激闘の記憶』(河出書房新社)『山田暢久火の玉ボーイ』(ベースボール・マガジン社)『浦和レッズ不滅の名語録』(朝日新聞出版)などがある。

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