“ブラック体質”でも…選手は圧倒的に元気 リバプールを“走らせる”クロップの人間的な魅力
【識者コラム】南野が1月に加入する欧州王者、実力でも戦術的にも“最高の状態”
日本代表MF南野拓実が移籍するリバプールは、世界の頂点に君臨するチームだ。
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昨季のUEFAチャンピオンズリーグ(CL)王者で、クラブワールドカップにも優勝したからではなく、実力でも戦術的なトレンドでも最高の状態にある。南野にどれほど出場機会が与えられるかは分からないが、ここでレギュラーを張れば世界トップクラスの選手として認められるだろう。
南野のほかにもFWサディオ・マネ、ナビ・ケイタがザルツブルクを経由してリバプールの一員になっている。リバプールが求める“走れる選手”を育成してくれるクラブとして、ザルツブルクとRBライプツィヒの“レッドブル・グループ”は、ちょうどいい供給源になっているわけだ。
リバプールのスタイルはスピードと強度に特徴がある。ある意味、非常に消耗の激しいプレースタイルで、けっこう「ブラック企業」的と言えるかもしれない。パスを回して効率的に省エネで、というサッカーではない。選手が楽しくプレーするというより、徹底的なハードワークを前提としていて、あまり長続きしそうもないのだが、ユルゲン・クロップ監督になって今季で5シーズンになる。
念願のCLチャンピオンになった昨季が4年目。ライバルのジョゼップ・グアルディオラ監督(マンチェスター・シティ)は、同じチームを率いるのは3年ぐらいが限度と自ら語っている。ジョゼ・モウリーニョ監督(トットナム)も、これまで率いたクラブで3年を過ぎると途端に下降線を辿ってきた。ところが、クロップ監督のリバプールは年を追うごとに強くなっている。真っ先に消耗しそうなのに、どんどん元気になっている。
補強の的確さ、年間を通してのマネジメントの上手さ、コーチングスタッフの優秀さは確かにある。クラブの総合力がバーンアウトを回避できている要因には違いない。ただ、決定的なのはクロップの人間的な魅力だと思う。
ハードワークが楽しくて仕方ないというのは、残業がしたくてたまらない社員ばかりの会社のようなもので、ブラックを通り越した真っ黒な体質とも言える。本来なら、5年もやっていれば“勤続疲労”が出てきてもおかしくない。選手の前に監督が消耗するかもしれない。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。