敵将ジェラードも「感心した」と賛辞 21歳FW食野、日本代表より「マンC復帰」の思惑
強豪レンジャーズ戦で見事なボレー弾、敵将ジェラードも苦笑い
「ダイレクトしかなかったですね。トラップするというのはなくて、咄嗟に左足が出ました」
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これが10月19日、スコットランドの強豪レンジャーズ戦で見事なボレーを決めて先制点を奪ったハーツFW食野亮太郎の、試合後の第一声だった。あの一瞬で「ダイレクトしかなかった」と、しっかり状況判断していたのだ。
本人は「ほんまに何か上手いことボールがこぼれてきてくれた」と話したが、目の前に相手GKのクリアボールが跳ね返ってきたのは完全なる僥倖(ぎょうこう)。しかもボールは浮き球で、ボレーで合わせるのは案外難しい。あのようなケースでクロスバーの上を大きく越えるシュートを打ってしまうストライカーは山ほどいる。
ところが食野は浮いたボールにしっかりと左足のインサイドを合わせ、しかもゴール左隅にループで飛び込むように、しっかりコントロールした。
「ループは狙いました。(ボールは)ちょっと浮いていましたね。でも、ああいうのって基礎です。小っちゃい時から親父と弟と3人で、公園でずっと蹴っていたボール。よく練習していたので、それが染みついた体で自然に出たゴールだった。だから親も、すごく喜んでくれたんじゃないかなと思います」
父と弟と一緒に、子供の頃から練習した浮き球への対応。それがレンジャーズという強敵相手の一戦で実を結んだ。ここしかないというシュートコースに決めた初ゴールに続き、またも質の高いゴールで逸材の片鱗をさらに露わにした。
このゴールに関しては、敵将スティーブン・ジェラードも苦笑いするしかなかった。
それもそうだろう。代表ウィーク直前に宿敵セルティックを抜いてスコティッシュ・プレミアシップの首位に躍り出たのも束の間、結局食野のゴールでこの試合を1-1ドローで終え、前日に勝利したセルティックに勝ち点で並ばれた。そして得失点差は「+21」の同点ながら、総得点数で抜かれるという、まさに首の皮一枚の差で首位を明け渡したのだから、面白いわけがない。
森 昌利
もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。