敵将ジェラードも「感心した」と賛辞 21歳FW食野、日本代表より「マンC復帰」の思惑

敵将ジェラードもハーツFW食野のゴールを称賛【写真:Getty Images】
敵将ジェラードもハーツFW食野のゴールを称賛【写真:Getty Images】

U-22日本代表遠征で得た気持ち良さ 「代表のみんな上手かったし、楽しかった」

 だからこそ、元リバプールのヒーローで、監督となった今でも英国サッカー界で燦然と輝くスターであるジェラードは、「我々にとっては良いゴールではなかった」と、まずはその気持ちを正直に打ち明けた。

 しかし21歳の日本人FWに関しては、「闘志があり、しっかり(こっちのサッカーで)戦えている。あのゴールでも分かるように、クオリティーのあるところも見せた。(この試合の)食野はよくやった。感心したよ」と続けて、敵ながらあっぱれという談話を残した。

 食野本人は、試合前から良い予感がしていたという。それはU-22日本代表への初招集で「自分自身、気持ち良くいいプレーをして帰ってきた」ことが起因していた。その気持ち良さが、「今日はなんとなくいけるなっていう、なんの予感もないですけど、自分の中で勝手に思って」という、良い思い込みにつながり、実際にゴールを生んだのだ。

 敵地でU-22ブラジル代表に3-2で競り勝った遠征では、「点を取れなかったことは反省している」と振り返ったが、「ある程度、自分のプレーができたという面では自信も持てたし。代表のみんな上手かったし、楽しかった」と話して、初めて代表に選ばれた嬉しさを素直に表した。

 また、「スコットランドに来て良かったなと、すごく思った。こっちはすごくタフですし、(相手の)体がデカいし強いから、ブラジルの選手が華奢に見えた。そういった面で、プレッシャーの面とかも、こっちにきてほんまにまだ2カ月弱ですけど、上手い具合に成長できているなと思います」と語り、Jリーグのガンバ大阪からマンチェスター・シティに完全移籍し、その後スコットランドにレンタル移籍したことで、すでにフィジカルのレベルが上がり始めていることを実感している。

 こうなれば、今後もスコットランドで鍛えて成長しながらU-22代表のレギュラーを狙い、来年は東京オリンピックに出場。そしてその後は、A代表にも選出されたいという欲も出るはずだ。

 しかし、食野の思惑はちょっと違う。

「(東京オリンピックの代表に)入れないとか入れるとか、そういうことは思っていない。とりあえず、こっちで結果を残したい。オリンピックだけがすべてではないし。僕は今、マンCに戻ることだけを考えているんで」

森 昌利

もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。

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