岡崎慎司と“滝二の先輩”の挑戦 独6部バサラ・マインツ、5年連続“昇格”と実現し始めた夢

広本大悟ら、日本人選手も所属する【写真:FC BASARA Mainz】
広本大悟ら、日本人選手も所属する【写真:FC BASARA Mainz】

クラブ創設から5年連続昇格の快挙「4部になればサッカーだけで生活ができるレベル」

 スタートはアマチュアの11部リーグ。クラブ立ち上げのためには、練習場所を確保するところから始まった。マインツにはトップリーグからアマチュアまで多くのクラブチームがあり、一つのグラウンドを複数のクラブでシェアするのは当たり前。苦労して見つけた場所もすでに他の2クラブが使用していたグラウンドで、初めは練習時間を確保できたのも午後3時からのみだった。選手の多くは日中に別の仕事をしていて、全員が集まって練習できる機会は限られていた。

 参入の際のリーグ会議では、登録に必要な書類が足りないことが発覚し、他のクラブの代表者の前で山下が頭を下げて試合の延期をお願いしたこともあった。肝心の選手を集めるために、マインツ大学の掲示板に貼り紙もした。立ち上げ当初は、お腹がぽっこり出ていてロクに走れない選手も頭数に入っているような状況だった。

 そんなバサラ・マインツが、立ち上げから5年連続でリーグ昇格を果たしていることは快挙と言っていいだろう。他クラブに比べれば資金力が優れているわけでもなく、戦いぶりもすべてが順調なわけではないが、ライバルチームの取りこぼしにも助けられてきた。

 アドバイザーの立場の岡崎は「決定するのはタカシくんだから」と現場でのマネジメントを山下に託しているが、試合の映像を見てチームにアドバイスもしているという。

 そうしたなかでクラブは一歩一歩、確実に前進を続けている。山下は「当面の目標は、やっぱりまずは5部に上がること」と語っている。昨季は7部だったバサラ・マインツだが、シーズン後にそのなかからカテゴリーが2つ上の5部クラブへ移籍した選手もいる。今季は6部での戦いなので、シーズン終了後には4部クラスの選手を輩出できてもおかしくはない。

 山下曰く、4部リーグともなると日本でプロになれなかった選手がそう簡単には通用するようなレベルではなくなるというが、「4部ともなればドイツではサッカーだけで生活ができるレベル。私たちのチームで1シーズンプレーして、ステップアップする。そういう形をどんどん増やしていきたい」と夢は膨らむ。

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