リバプール「黄金期到来」の予感 CL制覇による“クロップの覚醒”と好敵手マンCの存在

リバプールの選手に胴上げされるクロップ監督【写真:Getty Images】
リバプールの選手に胴上げされるクロップ監督【写真:Getty Images】

CL決勝で見せたクロップの執念、シルバーコレクターの汚名返上

 例えば今回のCL優勝インタビューでの失言事件。確かにクロップは試合終了直後のピッチ上で、興奮冷めやらぬ様子で話をしていた。そして、「いつもなら試合が終わって20分もすれば、半分酔っ払っている」という発言をして、この「酔っ払っている」というところで、英国では放送禁止用語に当たるスラングを発した。

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 しかし中継を担当していたギャリー・リネカーは「まったくしょうがない」という感じで小さく笑い声を立てると、「只今の表現には謝罪する必要はないと考えます」とコメントした。リネカーの対応も粋だが、これもクロップならではの陽気さでミスが許容された一例だ。

 ただしこんな陽気さが、このCL決勝までに6回連続でカップ戦決勝で負け続けた原因になっていたと言えるかもしれない。逆説的な話になるが、悲劇に耐える類稀な明るさがあるから、精神的にもギリギリの勝負となる決勝で負けを呼び続けたのではないか。

 ところが今回の決勝では、「最高のパフォーマンスを見せれば結果は二の次」というこれまでの姿勢ではなく、「どんなやり方をしても勝利を握る」という執念を見せた。

 それもリバプールがシーズンを通してわずか1敗の勝ち点「97」で悲願のプレミア優勝を逃した直後だったことも、大きな要因だった。もちろん、試合開始直後のPKで先制したこともあるが、あれだけ劇的な180分の準決勝を演じておいて、決勝では「アンチ・フットボール」とも呼べるエンターテイメント性の低い守備的な肉弾戦に持ち込み、勝ちにこだわった。

 しかしこの試合でクロップは監督としてまた一皮むけ、大きく成長したのではないだろうか。

 確かに凡戦という批判もあったが、シルバーコレクターという汚名を返上し、リバプール監督就任以来の無冠も返上しなければならなかった。ここで負けたら、来季にかかる重圧は生半可なものじゃなくなる。

 もしも負けていたら、さすがに太陽のように明るいクロップの人間性にも暗い影が落ちただろう。そうすれば当然の連鎖反応としてチームにも影が生まれ、主力の中にはかつてのルイス・スアレスやフィリペ・コウチーニョ(ともにバルセロナ)のように、優勝を求めて「次のクラブ」を模索し始める者もいたかもしれない。

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森 昌利

もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。

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