大迫勇也は“ボールを失わない” ブレーメンで築き上げた信頼「一番に僕を見てくれた」

約5カ月ぶりのフル出場、最終節で逆転でのEL出場権獲得を狙う

 貢献度が高いのは攻撃面だけではない。後半は来季のUEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場権獲得に向けて勝たなければならないホッフェンハイムが、攻撃的な選手を次々と投入し、ブレーメンは徐々に押し込まれていってしまう。ボールを奪っても素早く前線からプレスをかけてくる相手をいなすことができず、大迫も守備に奔走するようになる。それでも足を止めることなく必死に相手へ食らいついていく。最後のところで、相手のシュートを体を張って跳ね返すシーンもあった。

 終盤は動きも鈍ってくる。4月に負傷から復帰を果たしたばかりのコンディションは、まだまだ完調とは言えない状態だ。大迫も「疲れは少なからずある。復帰したばかりですし」と認めていたし、フロリアン・コーフェルト監督も「本当は60分には交代させようかともプランしていた」と明かしていた。

 それでも指揮官は、大迫をピッチに残した。後半27分、同45分にはカウンターから長い距離を走りシュートまで持ち込んだ。「欲を言えば僕自身、点を取りたかったですけど、最後ちょっとパワーが足らなかった」と振り返るように、シュートが枠を捉えることはできなかったものの、チームのために攻守に奮闘し、実に第13節バイエルン戦(1-2)以来となる約5カ月ぶりのフル出場を果たした。

 DFBポカール決勝に首位バイエルン・ミュンヘンと3位RBライプツィヒが勝ち上がっているため、7位まで来季のEL出場権が与えられる。9位ブレーメンも可能性を残したものの、最終節ではホームでライプツィヒに勝利し、勝ち点「2」差の7位ヴォルフスブルクと勝ち点「1」差の8位ホッフェンハイムが、それぞれアウクスブルクとマインツに引き分け以下という結果にならなければ、来季ヨーロッパへの扉は開かれないのだ。厳しい状況なのは間違いないが、大迫は力強く語った

「ヨーロッパリーグというより、勝つことだけしか可能性はない。勝つこと、それだけです。頑張ります」

 余計な計算はいらない。目の前にある試合に集中して臨み、チーム一丸で今季最終戦を勝利で飾る。幸運が微笑んでくれることを祈って戦いきるのみだ。

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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