「アート志向に変わってきた」 なでしこ永里優季、海外10年目で目覚めた“新境地”

昨冬は期限付き移籍したブリスベン・ロアーでプレー【写真:Getty Images】
昨冬は期限付き移籍したブリスベン・ロアーでプレー【写真:Getty Images】

“デザイン志向”から“アート志向”へ 大事なのは「その場のクリエイティブ」

 今回のオーストラリア挑戦で、海外でのプレーはドイツ、イングランド、アメリカに続いて4カ国目を数えた。永里の目には、各国のサッカーはどのように映ったのか。「同じタイミングでプレーしたわけではないので、それぞれの国を比較するのは難しい」と断ったうえで、“共通点”と“違い”について自身の見解を語る。

「サッカーの目的であるゴールを奪う部分に関して、海外のチームは過程がシンプルで、無駄なことをあまりしない。縦に早いサッカーは、ドイツ、イングランド、アメリカ、オーストラリアもすべて共通していると感じました。

 一番の違いは国民性です。例えば、オーストラリアはかなり裕福な国。物価も高い分、最低賃金は年収800万円とも言われています。サッカーをやっているのは裕福な家庭で生まれ育った子が占め、そこまで野心的ではないケースが多いと感じました。もちろん、彼女たちはサッカーが好きでプレーしています。ただギャップもあるので、最初はその違いに戸惑いました。逆に、アメリカはパッションの国。ドイツやイングランドのヨーロッパも自分が這い上がってやろうと思っている人たちが集まっているので、特に女子は嫉妬が多いですね」

 国によってサッカーは変わり、それぞれの人生によってサッカーも変わる。海外の厳しい競争のなかで生き残り続けてきた背景には、かつての結果至上主義から、プレーに対する「アート志向」が強まった変化が大きいという。

「以前は『点を取りたい』というこだわりがありました。でも今は、純粋にピッチで表現したいという思いだけ。結果を出そうとする“デザイン志向”から、“アート志向”に変わってきています。その場のクリエイティブを大事にしていて、それが最終的に数字につながるという捉え方なので、もちろん勝敗はありますが、結果に対してそこまで一喜一憂しなくなった。サッカーは数字だけでは測れない部分が山ほどあって、それを自分の中で大切にしていきたいと考えるようになりましたね。それがアートの本質なのかなと」

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