サッカー史は間違いだらけ? 勝敗を変えるVAR、“疑惑の判定”なき未来と一抹の不安
CL16強の3試合で勝負を分けたVAR判定、特に劇的だったマンUの決勝PK
UEFAチャンピオンズリーグ(CL)のベスト8のうち4チームが決定し、トットナム、アヤックス、ポルト、マンチェスター・ユナイテッドが準々決勝に進出する。このうちトットナムを除く3チームは、第1戦を落としながらの逆転勝ちだった。さらに、いずれもVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)判定が絡んでいる。
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レアル・マドリードにアウェーの第2戦で4-1と勝ったアヤックスの3点目は、VAR判定の末にゴールが認められた。ドゥシャン・タディッチのシュートは見事だったが、それ以前に中盤でいったんボールがタッチラインを割っていたのではないかということで、VARが使われている。アヤックスのノゼア・マズラウィがスライディングタックルでボールを奪ったところからカウンターが始まっているのだが、この時にマズラウィがラインの外へ出たボールを倒れながらフィールド内へ戻しているようにも見えた。これがラインを割っていたとすれば、レアルのスローインで試合再開となりアヤックスの得点は認められない。
映像で見てもスローインなのかどうかは微妙だった。ボールの中心はラインの外へ出ていたが、地面と接触していないボールの端はぎりぎりラインに乗っているように見える。完全にラインの外に出ない限りはインプレーだ。VARで確認してスローインではない――つまりアヤックスの得点は有効と判定されている。
ただ、アヤックスはすでに2戦合計3-2でリードしていて、VAR判定のゴールが決勝点だったわけではない。ポルトとユナイテッドのほうは、VAR判定によるPKが決勝点となった。
ローマと対戦したポルトは3-1で勝利し、2戦合計4-3で勝ち抜けている。決勝点は延長後半12分だった。アーリークロスに合わせようとしたポルトの選手のユニフォームがつかまれていたことがVARで確認されてPKが与えられた。
ユナイテッドのほうはさらに劇的で、PKが決まったのは後半アディショナルタイム4分。ジオゴ・ダロトのシュートが、ブロックに行ったパリ・サンジェルマン(PSG)のプレスネル・キンペンベの腕に当たっていたことがVARで確認され、ユナイテッドにPKが与えられている。PKまでは2戦合計3-2でPSGがリードしていたのだが、マーカス・ラッシュフォードのPKが決まって合計3-3となり、アウェーゴールが多いユナイテッドの勝ち抜けが決まった。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。