【W杯詳細分析・日本-コロンビア】データで浮き彫りになるザックジャパンの敗因 「自分たちのサッカー」に縛られた日本とペナルティエリア内で勝負できなかったエース本田

 

両国のエースの“仕事”に決定的な差

 

 この試合に関して相手陣内でプレーが多かったのは「縦パス」が多かったからではない。「縦方向へのロングボール」が多かったことでシンプルに相手の陣内にボールが運べたことが一つ目の理由だ。そしてその結果発生したセカンドボールに対して必死で奪いに行ったことが二つ目の理由だ。

 Duals(フィフティ・フィフティのボールをどちらが奪ったかを示すデータ)は28勝16敗(勝率63.6%)と圧勝だった。これが前半の日本代表の迫力の一つの姿だ。ただ問題は、そこで奪ったボールをどうするかというアイデア(Idea)と奪ったボールを何とかする個の力(Individual)という2つの「I」が不足していた。

 Individualについて見てみたい。この日、コロンビアはロドリゲスが後半から出場したことで戦況を一変させた。それは初戦のコートジボワール戦のドログバ登場を彷彿とさせた。先発だろうが途中出場だろうが、エースにはエースとしての役割がある。ロドリゲスのパス数は後半の45分間で21本、成功率は85.7%だった。相手陣内でのパスの成功率は92.3%、アタッキングサードでの成功率は100%だった。

 日本のエース本田のデータを見てみよう。パス数40本、パスの成功率は80%だった。それが相手陣内でのパスになると76.5%、アタッキングサードでは68%にまで下がる。高い位置にいけばいくほど成功率が上がるロドリゲスとは逆の傾向だ。理由は簡単だ。ロドリゲスが高い位置でパスを受ける時は日本のボールを奪った後のカウンターの場面が多かったからだ。

 カウンターの利点は相手チームの守備組織が整っていない状況で攻撃を仕掛けられることにある。日本のディフェンダーは当然ボール保持者にまず目がいく。つまりロドリゲスに目がいったため、パスの受け手へのケアが足りなくなる。高い位置であれ、フリーの選手へのパスの難易度は低い。

 一方、本田が高い位置でボールを保持した時、本当にイニシアチブを取っていれば、失わないように回すパス、勝負をかけるチャレンジのパスに対して、それぞれ味方の選手が反応するはずだ。日本の3失点目はまさに本田がバイタルエリアと呼ばれる高い位置で受けたパスに対して味方の反応のスイッチが入らず、出し場所を探しているうちにボールを奪われ、そのカウンターから生まれている。

 二つ目のイラストを見てほしい。これは本田(左)とロドリゲス(右)のプレー位置を示したものだ。

 本田比較

 90分間、60%以上ボールを支配していたにもかかわらず、ペナルティエリア内でプレーできなかった本田と、後半45分間、ポゼッション率もパスの成功率も圧倒的に低かったにも関わらず、ペナルティエリア内で5回もプレーし、決定的な仕事をしたロドリゲスの違いが浮き彫りとなっている。

 

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