稀代の“レジスタ”ピルロを生んだ名将との出会い ミランで味わった栄光と最大の挫折

(左から)MFガットゥーゾ、MFピルロ、MFセードルフ【写真:Getty Images】
(左から)MFガットゥーゾ、MFピルロ、MFセードルフ【写真:Getty Images】

“レジスタ”開眼、ミラン中盤で築いた黄金のトリオ

 バッジョとの共闘を望んでやってきたグアルディオラは負傷がちで、満足にプレーできていなかった。そのポジションにピルロを抜擢し、中盤ではアントニオとエマヌエレのフィリッピーニ兄弟が走り回ってピルロの守備力をカバーするという方策を取ったのだ。

 これが、見事にハマった。このシーズンのユベントス戦では、今でもサッカー史上で最も美しいゴールという呼び声の高いゴールも生み出した。

 中盤でボールを持ったピルロは、バッジョの前方に向けて美しい軌道のフィードを送った。バッジョは飛び出してくるGKの目前で、後方から来るパスをシュートフェイントをかけながらトラップしてかわし、ゴールに流し込んだ。ゲームメーカーとしてのピルロの存在もまた、バッジョの超絶技巧によって世界に認知された。

 01年夏、ピルロはわずか半年で、再びビッグクラブ行きのチャンスをつかむ。それが、インテルと同じミラノを本拠地とするACミランだった。

 加入当初はポルトガル代表MFマヌエル・ルイ・コスタの存在でファティフ・テリム監督から見向きもされなかったが、成績不振でカルロ・アンチェロッティ監督に指揮官が交代となると、風向きが変わる。ブレシアでのピルロを知るアンチェロッティ監督は、本人からの直訴も受け入れてアンカーの位置に起用したのだ。

 両脇を固めたのは、イタリア代表でも無二の盟友になっていくMFジェンナーロ・ガットゥーゾと、オランダ代表MFクラレンス・セードルフ。ルイ・コスタがレンジの短いパスで決定機を作り出すのに対し、ピルロは中盤の底から「レジスタ(司令塔タイプの守備的MF)」として長短のパスでリズムを作り出す。後にブラジル代表FWリバウドや、同MFカカといった選手にトップ下は入れ替わっていったが、中盤の3枚がもたらす絶妙な攻守のバランスはミランに黄金期を作り出した。

 まさにピルロがもたらすゲームメイクが、ミランの代名詞となった02-03シーズン、そこに大きな勲章が与えられた。欧州最高峰の戦いUEFAチャンピオンズリーグ(CL)で決勝まで勝ち進むと、対戦相手は同じイタリアのユベントス。ミランとピルロはPK戦にもつれ込んだ試合を制してビッグイヤーを獲得したのだ。アンカーはセンターバックもできるような屈強な選手でなければならないという固定概念に、結果という形でもピルロが大きな風穴を開けた瞬間だった。

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