【W杯詳細分析・アルゼンチン-ボスニア・ヘルツェゴビナ】後半から格段に機能し始めたメッシ その裏にあるアルゼンチンの戦術変更とは

 優勝候補の一つであるアルゼンチン代表に初出場のボスニア・ヘルツェゴビナがどこまで戦えるかという興味以上にメッシが苦手のワールドカップで活躍できるのかという点に注目が集まっていた。メッシが所属するFCバルセロナでの活躍を知っているファンからすると国の威信をかけて戦うワールドカップにおいて571分の出場時間で31本のシュートを放った結果がわずか1ゴールという結果は納得がいかないだろう。

 この日のメッシのパフォーマンスと優勝を狙うアルゼンチンの試合運びを分析してみたい。

 試合開始からわずか3分、ゴール左の角度のある位置からメッシから放たれたフリーキック。ボールはゴール前での競り合いのこぼれ球が相手ディフェンダーに当たりアルゼンチンの先制点が生まれた。メッシ大爆発の予感を感じさせた。

 しかしそれ以降、何度メッシにボールが渡っても複数のボスニアディフェンダーの厳しいマークにあい、決定的な仕事は出来なかった。前半終了時には爆発の予感が「また今大会も……」という不安に変わっていった。

 Messi ,ARG v BIH@15June2014 (10)

 この日スタート時のフォーメーションは3-5-2でメッシのポジションは2トップの右側だった。しかし実際のフォーメーションは両サイドハーフが低い位置で守備することが多く5-3-2の時間帯が長かった。同サイドの③ウーゴ・カンパニャロ、④パブロ・ザバレタ、⑪マキシ・ロドリゲスからメッシにパスを出してあとは「よろしく!」といった感じでバルセロナのように良い距離でのサポートはあまりなかった。

 実際、前半のメッシは28本のパスを受けたが、その後味方につなぐことが出来たのは19本で多くのボールを失っていた。意図的に出したパスの成功率は70%と決して高くない数値だった。

 前半のアルゼンチンの攻撃がどこを中心に行われていたかデータをイラスト化して見てみよう。最初の図はアルゼンチンの前半の攻撃に関するものだが、その割合を見ると半分近くの47.5%がメッシのいた右サイドから攻めていた。孤立したスーパースターはボスニアのディフェンダーに囲まれ輝くことはなかった。

アルボス前半

  開始早々のオウンゴールでの得点以外さほど見せ場を作れず、さらに後方に人数をかける守備は相手のロングボールを弾き返しても中盤での数的不利でセカンドボールが拾えない。実際Duels(フィフティ・フィフティのボールを奪い取るプレー)のデータはアルゼンチンの25勝29敗(勝率46.3%)だった。

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