12年越しの悲願へ 米女子史上最高のストライカーとW杯を巡るドラマ

深く刻み込まれた苦い記憶

 2008年の北京五輪を負傷で欠場したワンバックは、2011年に再びW杯の舞台に帰ってきた。
 このドイツ大会で、アメリカはブラジルに中国大会でのリベンジを果たし、ワンバックにとっては自身初の決勝にたどり着いた。相手はパスサッカーで「女性版バルセロナ」と世界を驚かせ、史上初めて決勝に臨んだ日本だった。下馬評では圧倒的有利と見られていたが、試合は延長戦へと突入する。
 そして自らの得点で2-1とリードした延長後半、勝利を確信したはずの彼女は、なでしこの信じられない勝負強さを目の当たりにする。
 日本は終了間際の117分、左CKからニアサイドに飛び込んだ澤穂希が右足を伸ばし、アウトサイドで合わせた。それを阻止しようと、ワンバックは必死に膝を伸ばした。だが、無情にもボールはワンバックの右膝をたたいてゴールネットを揺らした。手中に収めかけた栄光は、その手からこぼれ落ちた。歓喜の澤の後ろで頭を抱え、悲嘆に暮れる彼女は、ぼうぜんとその場に立ち尽くすことしかできなかった。最終的にはPK戦の末に日本に敗れ、またも悔し涙に暮れた。日本にとっては栄光の記憶だが、彼女にとっては忘れ難い苦い思い出として深く刻み込まれた。

 

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