英国を揺るがす25年前の悲劇再び 準決勝でなでしこにOG負け

1990年W杯で男子代表は西独戦でPK負け エース号泣

 イングランド女子代表は1日(日本時間2日)に行われたW杯カナダ大会準決勝日本戦で1-2で敗れた。後半アディショナルタイムに決まったイングランド代表DFローラ・バセットのオウンゴールという衝撃的な幕切れで、バセットのみならず、選手、監督も号泣した。イングランド国民は25年前の男子代表とスーパースターが25年前のW杯準決勝のPK戦で悔し涙に濡れた悪夢を再び思い出している。英BBCが報じている。
 イングランドにとっては悲痛な結末だった。猛攻を仕掛け続けて迎えた後半アディショナルタイムに左サイドを川澄に破られた。前線に走り込む大儀見に放たれた縦パスを、バセットがクリアしようと足を伸ばす。だが、クリアしきれずにボールはクロスバーの下を叩き、ゴール内に跳ね返った。
 試合後、バセットをはじめとした代表選手はそれぞれに涙を流していた。イングランド国民は1990年イタリア大会の4強で敗れ去った男子代表とスーパースターの姿と重ね合わせていた。
 そのスターとは元イングランド男子代表MFポール・ガスコイン。W杯イタリア大会においてガッザの愛称で知られたファンタジスタを擁したイングランドは準決勝で当時の西ドイツ代表と対戦。しかし、この試合、ガスコインは延長戦の際に、相手選手へのスライディングタックルによりイエローカード受け、決勝戦は累積警告により出場停止となった。これにより、イングランド史上最高の選手とも言われるMFはピッチ上で涙を流した。この涙は現在でもサッカーファンの間に語り継がれている。イングランドはPK戦の末に敗退。決勝戦出場停止による精神的同僚を隠しきれなかったガッザの代わりにキッカーを務めた名手クリス・ワドルが外したことも、悲劇の度合いを深めている。
 ツイッターなどのソーシャルメディア上では、涙のバセットを全面的に擁護する声で溢れかえっている。ガスコインの涙と同様に、イングランドの象徴に相応しいと、メッセージが多数投稿されている。前回大会王者の日本を相手に善戦を繰り広げたイングランド代表の戦いぶりには多くの国民が胸を打たれたようだ。
 そして、当時のガスコイン氏の涙を間近で見ていた、元イングランド代表FWで解説者のガリー・リネカー氏はツイッターで、「なんという幕切れだ。ローラ・バセットは本当に、本当に気の毒だ。心が張り裂けそうな敗戦だが、イングランド女子チームは素晴らしかった。彼女たちは堂々と振る舞うべきだ」とエール。奮闘空しく惜敗したライオネス(雌ライオン)を絶賛。なでしこジャパンとの死闘はすでに英国で語り草となっている。

【了】

サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images

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