長谷部誠が手にした「ドイツ二冠目」の価値 アンカーとして示したW杯への確信
【欧州蹴球探訪|第6回】“最悪な一日”の1カ月後に汚名返上、バイエルンを破りDFBポカール制覇
2018年4月21日は、長谷部誠にとって最悪な一日だった。
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フランクフルトの本拠地コメルツバンク・アレーナで行われたブンデスリーガ第31節のヘルタ・ベルリン戦。3バックのリベロで先発した長谷部は相手FWデイビィ・ゼルケに翻弄され、後半12分にペナルティーエリア内で足を引っ掛けてPKを献上してしまう。ゼルケのダイブにも見えた微妙な判定に長谷部は納得がいかず、自ら主審の下へ歩み寄って抗議し、ひとまずVARに持ち込むもジャッジは覆らなかった。
集中力を保てなくなった長谷部は同32分に相手MFマシュー・レッキーにバックライン裏へ抜け出されて2失点目を喫し、一層焦燥の度合いを深めていく。そして直後の同34分、持ち場から離れて右サイドからボールを持ち出して前に進もうとしたところで、ゼルケにユニフォームを引っ張られて激昂し、おもわず右肘で相手を殴打してしまう。退場を告げられた長谷部は、その後の裁定で4試合の出場停止処分を科せられ、リーグ戦に関しては3試合を残してシーズンの終了を迎えた。
2008年の冬にJリーグの浦和レッズからドイツへ渡ってからは思慮深く落ち着いた所作を保っていたが、浦和でプロデビューした頃の長谷部はむしろ血気盛んで、審判へ異議を唱えるだけでなく、チームメイトにも厳しい言葉を浴びせることがたびたびあった。彼の本質は熱情をたぎらせる闘士だ。ファウルを許容してはならないが、それでもヘルタ戦で見せた“素の姿”には、断固として譲れない勝負への意地が透けて見えた。
そんな長谷部にはまだ、汚名を返上する機会があった。リーグ戦は来季2018-19シーズン開幕戦の1試合までが出場停止の対象になるが、チームが総力を結集して上りつめたDFBポカール(ドイツ・カップ戦)決勝の舞台に立つ権利は得られたのだ。
島崎英純
1970年生まれ。2001年7月から06年7月までサッカー専門誌『週刊サッカーダイジェスト』編集部に勤務し、5年間、浦和レッズ担当を務めた。06年8月よりフリーライターとして活動を開始。著書に『浦和再生』(講談社)。また、浦和OBの福田正博氏とともにウェブマガジン『浦研プラス』(http://www.targma.jp/urakenplus/)を配信しており、浦和レッズ関連の情報や動画、選手コラムなどを日々更新している。2018年3月より、ドイツに拠点を移してヨーロッパ・サッカーシーンの取材を中心に活動。