長野を女子サッカー育成の“聖地”へ サンディエゴとの固い絆が生んだ画期的プラン

目の前の利益でなく長期的な視点での協力関係

「非常にセンセーショナルな提案だった。女子サッカーを普及させたい気持ちもあったし、なでしこリーグで1部に上がって影響力があるのも感じた。将来的に子どもたちをどうトップまで押し上げるのか、長野の女子サッカーをどうするのかと考えた時に、海外とつながっているのは非常に大事だと感じた。セカンドキャリアや教育、女子のサッカー環境という点で、アメリカは理解と整備がされている。そこに選手を送り込むようなシステムがあれば、女子選手に夢や教育、人間形成の場を与えられるのではないかと感じた」

 こうして両者による、新たな取り組みがスタートした。SDSAがサンディエゴで運営している米国女子2部に所属するチームを、「サンディエゴ・パルセイロ・レディース」というチーム名に改名。長野パルセイロのロゴ、エンブレムを使用するライセンス契約を結び、今年3月にJリーグから承諾を得た。

 こうして、長野とサンディエゴの間で固い絆が結ばれた。山内氏は30人ほどの選手枠を、日本と現地の選手で半分ずつくらいにしたいとの意向もあるという。

 その一方で、堀江社長はこの提携は短期的な選手のやり取りをするというような、目の前の利益を求めたものではないと話す。

「もっと長期的に考えて子どもたち、高校生が4年間アメリカの大学に行って何かを感じて勉強もして、サッカーも上手くなって長野に帰ってきたらプラスになる。そこでサッカーを続けなかったとしても、長野に対して思い入れを持ってくれると思う。『長野でこんなセレクションがあったね』というだけで終わる子がいるかもしれないけど、何かがきっかけで、思いもよらないような人生が形成されたら素晴らしいこと。利を求めるというより、日米両国の協力関係を築ければという気持ちが強かった」

 山内氏が出したパスには、思った以上の理解と価値が見出されたリターンパスが来た。だからこそ、山内氏も長期的な観点で確実な価値を返す自信があると話す。

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