千葉の水野晃樹が恩師・オシム氏に渡したい“手土産”

復活のプロローグ

 今年で30歳を迎えることから、水野もベテランと呼ばれる域に達しようとしている。しかし、その目には衰えぬ野心がみなぎっていた。まだまだ成長できる、そう力強く思える理由に、セル ティック時代の先輩の名を挙げた。
「中村俊輔さんの話になりますけど、セルティックからスペインに行き、あまり試合に出られなくて日本に帰ってきた。そこから、あの歳でも成長してMVPをとって今もバリバリでやっている。何歳でも成長はできるし、そういう意味では自分もまだまだ先があると思える」
 キャリアの晩年に差し掛かり始めたとは思っていない。もう30歳ではなく、まだ30歳。自分にまだまだ成長の余地があることを信じている。そして、その伸びしろは、昨シーズンのホーム最終戦となったFC東京戦でも垣間見ることができた。
「自分らしいプレーが出た試合でした。現代表の太田(宏介)と、武藤(嘉紀)がこちらのサイドにいた。少なからず自分も代表にいた選手なので、ま だこいつらには負けねぇぞという強い気持ちを持って臨みましたね
 3-4-3システムの右ウイングバックで先発出場。前半21分、CKのこぼれ球から目の覚めるような強烈なミドルシュートで相手ゴールを脅かす。その数分後、裏に抜け出した水野は、日本代表DF太田の逆をつき、正確なクロスを上げ、この試合最大の決定機を演出した。
 さらに守備でも、泥くさくスペースを埋め、昨季Jリーグで最もクロスを上げていた太田を封じ込んだ。FC東京の武器ともいえる左サイドの攻撃力を低下させ、無失点にも貢献した。
 かつて攻撃のみに専念し、自分よがりなプレーに徹していた男は、献身的に走り、適切な状況判断を下すチームプレーヤーとして再びその輝きを放っていた。
 そして今、全 盛期の姿を取り戻すため、体重も61キロまで絞った。昨年から7キロも落とし、最も体にキレのあった8年前の62キロに近づけた。水野の決意は本物だ。
「僕は自分を追い込んだほうがいいタイプ。オシムさんのころだって、3カ月オフなしだったんだから」
 オシム監督に会わせる顔がない。その心情は否定できない。しかし、それ以上に輝く姿を見せたい。その気持ちが何よりも強い本心だ。手ぶらで対面することはできない。胸を張って恩師との再会を果たす時、その手には「復活」という最高の手土産が握りしめられているはずだ。
(2月24日発売のサッカーマガジンZONEで掲載)
【profile】
水野晃樹(みずの・こうき)1985年9月6日、静岡県生まれ。清水商(現・清水桜が丘)から04年に市原 (現・千葉)に加入し、08年にスコットランド1部セルティックに移籍。10年のシーズン途中に柏へと活躍の場を求める。その後、13年から甲府でプレー。今季から8年ぶりに古巣の千葉へと復帰を果たした。日本代表キャップ数は4試合。
【了】
城福達也●文 text by Tatsuya Jofuku
ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング