なぜミキッチはサポーターに愛されたのか? 広島の“大天使”が人々の心に遺したもの

広島の街を愛し、Jリーグをリスペクトした9年

 街を愛しただけではない。サッカーにおいても、彼は広島を、そしてJリーグをリスペクトする。2013年、広島がJリーグを連覇した年、こんな言葉を残した。

「サッカーの質において、欧州のほうがシステマティックであることは確かだ。Jリーグは欧州よりもテンポが速く、スピードもあるし、運動量も多い。だけど、ポジションの役割に対する理解が不足しているのか、形が崩れやすいことも事実だ。

 ただ(当時の)広島であれば、ブンデスリーガでの経験を深めれば中位での戦いを維持できる実力はあるだろう。バイエルン・ミュンヘンのようなトップクラスはともかくとして、他のクラブとであれば十分に競い合える。欧州五大リーグのビッグクラブ以外であれば、Jリーグで腕を磨いたほうがいい。それに実際、クラブワールドカップで僕は、欧州の記者に『広島は信じられないサッカーをするね。興味深いよ』と何度も声をかけられたんだ」

 口を開けば、「海外で経験を積むべきだ」とサッカー人たちは言う。そのたびにサポーターは心をえぐられる想いがする。しかし、ミキッチは堂々と自身の主張を展開。Jのレベルを現実的な水準で明言し、日本でも成長できることを呈示した。それがどれほど、サポーターの想いを潤わせたことか。

 

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