名門校で期待も「自分のゴールが少なすぎ」 “ライバル台頭”が転機…引き出された持ち味

前橋育英の3年生FW関蒼葉「僕が成長しないといけない」
9月5日に夏の中断期間を終え再開したプレミアリーグとプリンスリーグ。1年を通じた戦いもいよいよ後期へ突入し、夏を経て成長した選手たちが凌ぎを削っている。
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ここではリーグ戦で躍動を見せる選手たちをピックアップしていきたい。今回はプレミアEAST第12節の流通経済大柏vs前橋育英の一戦から。1-1で迎えた後半15分、値千金の決勝弾を叩き出したのは前橋育英の3年生FW関蒼葉だった。このゴールは8月上旬の和倉ユースサッカー大会で語っていた熱い思いを実証する「宣言通り」のゴール」もあった――。
夏を越えて雰囲気が変わった。足元の技術と一瞬の裏抜けを得意とする177センチのストライカーは、悔しさで終わった前期を経て、逞しく成長を遂げている。
昨年はプレミアEASTに6試合出場し、2ゴールをマーク。今年は昨年の主軸だったFW立石陽向とともに、チームのポイントゲッターとして最前線に君臨することを期待されていた。
しかし、今年のプレミアEAST前期では3ゴールにとどまり、立石が6ゴールとチームを牽引するなかで、思うような結果を残せなかった。チームも前期を7位で折り返し、首位の流通経済大柏とは勝ち点差11。優勝戦線から大きく引き離されてしまった。
7月のインターハイでも立石が2戦連続ゴールと奮起するなかで、初戦の鵬学園戦ではBチームから這い上がってきたFW安藤大地にポジションを奪われ、ベンチスタート。スタメン出場した2回戦の滝川第二戦ではシュート1本しか打てず、前半で交代。無念の2回戦敗退をベンチで味わった。
もちろん、役割の変化も影響していた。もともと身体を張ってポストプレーをしたり、一発の裏抜けでゴールに迫ったりと、最前線で嗅覚を働かせてフィニッシュに直結するプレーを得意としていたが、今年は得点力のある立石と2トップを組んだことで、彼に求められたのは1.5列目に落ちてクサビや縦パスを受け、周りに配って攻撃を組み立てる役割だった。これによりプレーの引き出しは増えたが、ゴールから遠ざかるなかで、自分自身とチームに対する危機感が芽生えていった。
「インターハイに負けてから『自分のゴールが少なすぎる』と強く思ったんです。役割が変わったことを言い訳にせずに、落ちるプレーをやりながらも、ゴールをもっと貪欲に狙っていかないといけないと。相手が来ていても強引にでもやり切るプレーを出していかないと、後期に勝ち点を積み重ねられないし、選手権に向けても重要になってくると思ったんです」
前期、プレーをしながら感じていたのは「あと1点」の重みだった。
「あと1点入れば勝利につなげられたのに、あと1点入れば優位に試合を進められたのにと思う試合が多かった。その1点を決めるストライカーがチームに絶対に必要だし、いつまでも立石頼みでは上にはいけない。立石やほかの選手も決めるけど、自分も決める。そういう存在にならないといけないと思いました」
決意を持って迎えたインターハイ直後の和倉ユースサッカー大会で、彼にとって1つの転機が訪れた。それは3年生FW安藤大地がトップチームで頭角を現してきたことだった。当初は「強烈なライバルがきた」とポジションを脅かされる存在だったが、この大会で安藤と2トップを組むようになったことで、一気に関の持ち味が引き出された。
「安藤は落ちた時の足もとの受け方がめちゃくちゃうまくて、ターンも小回りが利いて鋭い。その動きのおかげでゴール前の動きに集中することができた」と口にしたように、安藤との絶妙な距離感と連動性から何度も相手DFラインを突破し、グループリーグから結果を残し続けた。
半年間で身につけた落ちるプレーも織り交ぜてチャンスメークに関わると、日大藤沢との決勝戦では鋭い動き出しから2ゴールをマークし、チームを優勝に導くとともに大会MVPを獲得した。
「一昨年の選手権優勝のチームにはオノノジュ慶吏(慶應義塾大)さんと佐藤耕太(神奈川大)さんという2人の絶対的なストライカーがいて、その印象が強くて、僕らはそれ以上のインパクトを出せていない。だからこそ、僕が成長しないといけないと思っています」
和倉ユースで示した「エースストライカー宣言」。あの躍動から1か月後、重要なプレミア後期開幕戦でその言葉を現実のものにした。
流通経済大柏戦。1-1で迎えた後半15分のシーンだった。MF笹蒼尉がドリブルで前進すると、相手CB井上颯が引き出された瞬間を関は見逃さなかった。相手DFの視野から消えていた関は、その背後へ斜めにスプリントし、笹からのスルーパスをペナルティーエリア内で受けた。そこにはカターレ富山への加入が内定しているCB大徳剛矢が素早くカバーに入ってきた。だが、関は慌てなかった。
「笹のドリブルによってCBが釣り出されているのが見えて、その裏を狙いました。でも、大徳選手なら絶対にスペースに気づいてカバーリングをしてくるだろうなと思っていました」
大徳を横目で確認しながら裏へ抜ける。当初はそのまま左足を振るつもりだったが、ボールを受ける直前に首を振ると、予想通り大徳が素早くカバーに入り、距離を詰めてきた。
「相手の判断と寄せが速かったので、それを逆手に取りました」と、左足でシュートを放つと見せかけてキックフェイント。大徳をかわして中に持ち出すと、右足で冷静にゴール右隅へ流し込んだ。
喉から手が出るほど欲しかった「あと1点」。それを自らの右足で奪い切り、チームに2-1の勝利をもたらした。
「これまでの経験がしっかりとつながっているなと感じています。立石と組んだことでより周りが見えるようになったし、安藤と組んだことで昨年までの自分のプレーに加えて、夏から磨いてきた相手を見てプルアウェイやスペースを作ってから斜めに動き出す動きも合わさって、よりタイミング良く抜け出せるようになった。それがこの夏の一番の成長だと思っています」
首位相手に放った、これまでの積み重ねが凝縮された「宣言通りの一発」。「継続あるのみです」と口にする彼の表情には、ストライカーとしての風格が滲み出ていた。
一昨年のチームが成し遂げた日本一に向けて。関蒼葉のエースストライカーとしての勝負の秋は、自ら放った号砲とともに力強く始まった――。
(安藤隆人 / Takahito Ando)
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』、新刊は『ともに歩き出す サッカーと家族と新しい日常』(ともに徳間書店)。講演家としても全国を回っている。元・名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター(2022年〜2026年4月)、現・國學院大學体育連合会蹴球部コーチ。






















