158cmの小兵FWが掴んだチャンス「次はない」 J内定選手も感嘆…変幻自在のリズムは「かなり厄介」

前橋育英3年生FW安藤大地「必ず1回はチャンスが来ると思っていました」
9月5日に夏の中断期間を終え再開したプレミアリーグとプリンスリーグ。1年を通じた戦いもいよいよ後期へ突入し、夏を経て成長をした選手たちが凌ぎを削っている。
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ここではリーグ戦で躍動を見せる選手たちをピックアップしていきたい。今回はプレミアEAST第12節の流通経済大柏vs前橋育英の一戦から。前橋育英3年、158センチのFW安藤大地はプレミア2試合目となるスタメンで抜群の存在感を放った――。
158センチの小柄なFWが、ピッチの至るところに顔を出す。最前線に張っていたかと思えば、スッと中盤のライン間に降りてボールを引き出す。ワンタッチ、ツータッチで味方につなぐと思いきや、フリーであれば鋭くターンしてドリブルからラインブレイクを仕掛ける。
相手CBの大徳剛矢(カターレ富山内定)が「本当に嫌な場所に落ちていくし、ボールを受けてからが速い。かなり厄介だった」と口にしたように、ずば抜けたアジリティーと高いスペース察知能力、足もとの技術を融合させた1.5列目での効果的なプレーは、前期首位の流通経済大柏を苦しめた。
「ライン間でボールを受けることや、受けたあとにチームをうまく動かすプレーが得意です。自分の長所はボールを捌くプレーや相手の視野から意図的に出入りするなど、細かい部分を丁寧にできることと、マイボールにする力だと思っています」
サイズだけを見れば、最前線で屈強なDFたちと渡り合うには決して恵まれているとは言えない。だからこそ、相手の視野から消え、どこに立てばボールを引き出せるのかを考える。ボールを収めれば簡単には失わず、味方へつなぎ、自らも事前に察知していた次のスペースへと連続して動く。その変幻自在な動きが前橋育英の攻撃にリズムを生み出している。
だが、安藤がプレミアEASTのピッチで存在感を放つようになるまでの道のりは、決して平坦ではなかった。
小学校時代は埼玉の名門・江南南少年団でプレーし、そのまま中学時代はクマガヤSCジュニアユースでプレー。MF金子拓郎(浦和レッズ)、MF竹ノ谷優駕(モンテディオ山形)らOBたちの多くがプレーする前橋育英へ進学をした。
だが、中学から高校にかけてフィジカル的な成長を遂げていく選手たちの中で、頭角を表すことができなかった。1年時はルーキーリーグでプレーし、2年時は県リーグ1部を戦うCチーム。最高学年になった今年もスタートはBチームだった。FW立石陽向や関蒼葉らが前線で存在感を示すなか、Aチームは「遠く感じた」という。それでも、諦めることはなかった。
「どこかで必ず1回はチャンスが来ると思っていました。その1回をどうものにするかをずっと考えていました」
Bチームで特別に大活躍を続けていたわけではない。それでも毎日のトレーニングに全力で向き合い、週末の県リーグを戦った。さらに意識したのが、ピッチの外だった。
「授業をしっかり聞く、時間を守る。当たり前のことを当たり前にこなす。それをすることでスタッフや仲間からの信頼を得られると思っていました」
サッカーでは「結果が全てだと思った」と自主トレでボールを受けてからシュートまで持っていく積極性をひたすら磨き、課題だった決定力とも真正面から向き合い続けた。そして、その積み重ねを松下裕樹コーチはしっかりと見ていた。プレミアEAST前期最終節の帝京長岡戦を前に、突然Aチームに呼ばれた。
「ようやくきたチャンス。次はないと思って、与えられた一瞬で何を見せられるのかは常に考えていました」
FWとしてスタメンでプレミア初出場を果たすと、チームは0-2で敗れたが、前半は積極的にゴール前に飛び込んでシュートを2本放つなど、得意の中継点となるプレーだけでなく、ゴールを狙う姿勢を全面に出した。これが評価されると、インターハイでもスタメンを確保し、1回戦の鵬学園戦ではトップで初ゴールをマーク。続く2回戦の滝川第二戦(1-3の敗戦)ではベンチとなったが、「全国で1点を取れたことで、自信というか、『やれるんだ』という手応えをつかめたんです」と、このゴールによって彼の視界は一気に開かれた。
続く和倉ユースサッカーフェスティバルではスタメンの座を確保すると、頭脳的な落ちてからのプレーと、一気に加速してラインブレイクをしていく突破力、シュートが猛威を振るい、チームを優勝へと導く原動力となった。そして、その好調を維持した状態でプレミア後期開幕を迎えた。
流通経済大柏戦、彼と関の2トップは90分間、相手にとって脅威になり続けた。ボールが動いている間に周りを見て、相手DFの死角に潜り込みながらボールを引き出して、ファーストタッチから加速した状態でドリブルをしたり、叩いたあとに瞬時に次のスペースへ潜り込んだりしていく。この連続性の質は落ちることなく、相手からすれば一瞬でも目を離せば、起点を作られ、次の瞬間には背後のスペースに入り込まれる。冒頭の流通経済大柏のCB大徳の言葉も納得だった。
安藤の躍動もあり、チームは逆転で2-1の勝利。上位進出に向けて首位を相手に幸先のいいスタートを切ることができた。
「トップは一歩ずつ毎日前進していけば、届かない場所ではないと思っていました。大事なのはこれを止めないこと。選手権に向けてもっと相手にとって嫌な選手になれるようにやっていきたいと思います」
一度しか来ないかもしれないチャンスを信じて準備を続け、その一瞬を掴んだ安藤大地。選手権を見据える前橋育英の最前線で、小柄な背番号33が今、大きな存在感を放ち始めている。
(安藤隆人 / Takahito Ando)
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』、新刊は『ともに歩き出す サッカーと家族と新しい日常』(ともに徳間書店)。講演家としても全国を回っている。元・名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター(2022年〜2026年4月)、現・國學院大學体育連合会蹴球部コーチ。























