カオスな“魔境”J2は「異種格闘技戦」 指揮官が燃やす闘争心…選手任せでは「J1に届かない」

多種多様なスタイルが混在するJ2リーグ
近年、“魔境”と称されることの多いJ2だが、2026-27シーズンも混沌としている。2026年J2・J3百年構想リーグで圧倒的な強さを誇ったベガルタ仙台が足踏み状態を強いられる中、逆に百年構想リーグで苦しんだRB大宮アルディージャ、栃木シティなどがまずまずの滑り出しを見せており、今後の動向は全く予想がつかない。
横浜FCの須藤大輔監督は「必ずしも全てには当てはまりませんが、百年構想リーグ終了後に監督が代わったチームは多少なりとも苦労するのかなと思っています」と率直な意見を口にする。
今季J2で今夏の指揮官交代が行われたチームは大宮、ジュビロ磐田、徳島ヴォルティス、FC今治の4チーム。前述の通り、宮沢悠生監督が退任し、ナルシス・ペラッチ・ナダル監督が後を引き継いだ大宮だけは上位に位置しているが、それ以外の3チームは序盤の苦戦が目立つ。
「我々と同じタイミングでJ1から降格した湘南ベルマーレ、アルビレックス新潟、1年前に降格した北海道コンサドーレ札幌などは、百年構想リーグから新体制に移行し、着実に戦術や実戦経験を積み重ねているので、その分、少し先を行っているのかなと考えています。
百年構想でうまくいった仙台やテゲバジャーロ宮崎、ヴァンフォーレ甲府などは他チームから分析されている傾向がありますね。この半年、まずまずだった分、スタッフも好感触を抱き、少し余裕を持った入りをしているのでしょう。
僕らはそのスキを突く作業をしていかないといけない。自分たちも5~6試合したら分析・対策されるようになるでしょうし、常に先を行っていないとJ1には届かない。本当に今季のJ2は『カオス』ですね(苦笑)」
J2の指揮官の顔ぶれを見ると、長年Jリーグで指導している湘南の長澤徹監督、宮崎の大熊裕司監督、富山の安達亮監督のようなベテランもいれば、藤枝MYFCの槙野智章監督、徳島ヴォルティスの吉本岳史監督のようにJ2経験が少ない監督もいる。それぞれの色が出ているのも、このリーグの醍醐味である。
「J1の場合は選手個々の能力が高いので、選手任せにしていても戦えるところはありますけど、J2やJ3の場合はそうはいかない。指揮官自身がさまざまな工夫を凝らしてチーム作りを進めていかないと、なかなか勝てないんです。その分、多種多様なスタイルを見ることができる魅力があると思います。
一例を挙げると、超攻撃サッカーを志向する僕と、堅守速攻を突き詰めているブラウブリッツ秋田の吉田謙監督は全く目指しているところが違いますよね。その両チームが同じ土俵で戦うんですから、『異種格闘技戦』みたいな感じ(笑)。今治に中井卓大ピピ君が入ったりと、話題性のあるチームも少なくありません。多彩なバリエーションとフィロソフィーを目の当たりにできるリーグというのはそうそうない」
その上で、須藤監督はこう語り闘争心を燃やす。
「僕としても、横浜FCの選手育成力と相手陣内で主導権を握るスタイルを前面に押し出し、ブランディングをしながら勝っていきたいと思います」
ブランディングという意味では、1つ特徴的なのが勝負服。須藤監督は2018年にガイナーレ鳥取で監督に就任して以降、「パリッとしたスーツでキメている」という印象が非常に強い。指揮官によっては「ジャージで采配を振るった方がリラックスできる」という考え方の人もいるし、「正装で挑みたい」と考える人もいる。須藤監督は後者なのだろう。
「藤枝の時、スポンサーをやってくれていたユニフォームセンターという会社があって、その社長が僕のスーツ姿を見て、『ウチのスーツをプレゼントしますから着てください』と言ってくださって、秋冬・春夏を年間1着ずつ提供いただいたというのが、ここまでの流れなんです。今は4着くらい持っていて、それを試合ごとに回しているんですけど、さすがに横浜FCの監督になったので、この先は難しいかもしれないですね(苦笑)。
仮に横浜FCのスポンサー企業から名乗りを上げていただけるところが出てくるのなら、僕自身はすごく嬉しいですね。いずれにしても、これからも勝負服で試合には挑んでいきます」
地元・横浜でファッショナブルな須藤監督が成功してくれれば、母校である横浜国立大学付属小中学校や桐光学園の関係者も大いに喜ぶはずだ。桐光学園といえば、2006年ドイツ・10年南アフリカワールドカップ(W杯)日本代表の中村俊輔・日本代表コーチ、26年W杯メンバーの小川航基(FC町田ゼルビア)の2人が有名だが、50人を超えるプロ選手を輩出。加えて、須藤監督のように指導者になってから一気に知名度を高めている人材もいる。
「俊輔や藤本淳吾(横浜F・マリノス・ユースコーチ)、本田拓也(鹿島アントラーズ・ユースコーチ)など日本代表歴のある後輩がたくさんいます。彼らのことは本当にすごいと思っていますし、みんな凄まじい努力をしてきたことをよく理解しています。現役時代は過去のことですが、僕自身、完敗です。でも『指導者では負けないよ』という思いは強い。自分はこの先の人生で勝負していかなきゃいけないんです。
今季の横浜FCでどういう戦いをするかで自分自身の価値も大きく変わるのも自覚しています。ただ、そういう結果だけ追い求めると絶対にうまくいかない。繰り返し話している通り、プロセスを大事にして、1日1日を積み上げていくことですね。その取り組みは絶対に嘘をつかない。僕はそう信じて、これからも精進していきます」
常に高みを目指し続ける須藤監督はカオスの今季J2を突破できるのか。先々の戦いから目が離せない。
(FOOTBALL ZONE編集部)(元川悦子 / Etsuko Motokawa)

元川悦子
もとかわ・えつこ/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。























