3試合連続で決勝Gも「ちょっと抑えなきゃ」 J1首位をけん引するベテラン…“量産”に隠された理由

J1得点ランク3位タイのいぶし銀ゴールハンター
クラブ史上初の開幕4連勝を達成し、J1リーグ戦のトップに立つ柏レイソルを、32歳のベテランアタッカー瀬川祐輔がけん引している。開幕からすべて後半からの途中出場ながらも、第2節以降の東京ヴェルディ、V・ファーレン長崎、清水エスパルス戦で立て続けに決勝ゴールをゲット。短いプレータイムでチームトップ、リーグ全体では3位タイにつけるいぶし銀のゴールハンターがまばゆい脚光を浴びている理由に迫った。(取材・文=藤江直人)
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選手ならば誰でも、前半のキックオフを告げるホイッスルをピッチの上で聞きたい。しかし、開幕から4試合を終えた今シーズンで柏レイソルの瀬川祐輔が先発に名を連ねた試合は「0」にとどまっている。
ただ、すべて途中交代でピッチには立っている。プレータイムの合計は、ちょうど1試合半にあたる135分。そのなかで第2節以降は3試合連続ゴールをマーク。すべてが決勝点という離れ業を演じている。
瀬川の大活躍もあって柏もクラブ史上で初めて開幕4連勝をマーク。2025シーズンの優勝を最終節まで争った王者・鹿島アントラーズと勝ち点12で並び、得失点差で1ポイント上回って首位に浮上している。
常に抱き続ける先発出場への憧憬の思いと、ジョーカーやスーパーサブとして全幅の信頼を寄せられる充実感。対極に位置する2つの思いの狭間で、32歳のベテランアタッカーは後者を優先させている。
「個人的な気持ちは、ちょっと抑えなきゃいけないと思っています。もちろんスタートから出たいですけど、勝っているからこそ変えられないと思うし、スタートだけでなく点を決めたいとかいろいろとありますけど、開幕4連勝という記録はさらに伸ばしていきたい。鹿島も勝っているし、1回でも負けたら引き離されてしまう。そうした緊張感を持ちつつもチームの勝利を優先しながら、自分のアピールというものも続けていきたい」
短いプレータイムで、なぜチームトップとなる3ゴールを量産できているのか。清水エスパルスのホーム、IAIスタジアム日本平に乗り込んだ8月29日のJ1リーグ第4節。両チームともに無得点で迎えた後半開始から垣田裕暉に代わって投入され、後半26分に決めた先制&決勝ゴールに理由が凝縮されていた。
最終ラインに降りたボランチの熊坂光希にボールが渡る。センターサークル内から右ウイングバックの久保藤次郎へ向けて熊坂が視線を送ろうとした瞬間に、瀬川は「次の動きが認知できていました」と振り返る。
「(熊坂)光希が(久保)藤次郎に出す前から、藤次郎が相手の裏に出るだろう、と思っていたので、ノッキングせずにボールと藤次郎と一緒に相手ゴールへ向かえました。とにかく藤次郎が分かりやすいタイミングで動き出してあげようと考えていましたし、ファーかニアに入るのかもその後の一瞬で決めました」
感覚に導かれた答えはニアサイド。次の瞬間、ゴールへ向かって並走していた清水のセンターバック、住吉ジェラニレショーンの視界から消えるように、瀬川は相手の後方へ意図的に回り込んでいる。
「あれはフォワードのセオリーですね。1回離れてから身体を相手の前に入れて、先にニアでボールに触るのか。それとも相手のポジショニングを見て、ハーランドみたいにそのままファーで待って流れてくるボールを流し込むのか。二択のうちのどちらかだと思ったなかで、あのポジションを取らないとニアには入れないので」
この間に熊坂が放った正確なロングフィードに反応し、清水の左サイドバック吉田豊の背後に広がるスペースへ飛び出していた久保はフリーの状態から、いつでもクロスを供給する体勢を整えていた。
一方の瀬川は住吉の死角から再び前方に姿を現し、左手でニアを指さしながら一気に加速していく。
「瀬川くんが突っ込んできたのは見えていので、あとはそのへん(ニア)にボールを上げておけば瀬川くんは足を伸ばすとかして何とかしてくれる。瀬川くんを信じてクロスを送りましたし、あそこで合わせられるのが瀬川くんなので。コースへの入り方とか一瞬のスピードの上げ方とか、そこは瀬川くんのセンスだと思います」
満を持してクロスを供給した久保の信頼に応えるように、住吉よりも一瞬早くニアへ飛び込んだ瀬川が右足をボールにヒットさせる。住吉の右足をかすめたシュートはコースを変えて、ゴール右隅へ転がり込んでいく。身長170cm・体重70kgと決して大きくはない身体でゴールを決められる理由を瀬川は次のように明かした。
「自分にボールが集まっているからだと思うし、実際に他のシーンでも味方と目が合う回数も多いんですね。身体が大きくないのでゴール前でのポジション取りと、あとは質のいいボールが来てくれたら、何て言うんだろう、シュートには自信があるので。今日も含めて、すべてのゴールはそういったものの結果だと思っています」
ちょっぴり控え目な口調で言及した自身のプレースタイルへ抱く自信。身体に染みついたゴールを奪うためのセオリー。ボールを持つ味方の次のプレーを最優先させる思考回路。そして、久保をはじめとするチームメイトから寄せられる全幅の信頼感。すべてが融合された結果が、リーグ3位タイとなる3ゴールに反映されている。
明治大学から2016シーズンにプロの世界へ飛び込み、ザスパクサツ群馬を皮切りに延べ6つのクラブに所属。2018シーズンから4年間所属し、昨シーズン途中から復帰した柏へ抱く愛は深く、そして大きい。
開幕4連勝にも満足しないとばかりに、瀬川は柏がさらに強くなっていくための課題を挙げている。
「悪くはないけど、前半の戦い方はもう少し変えなきゃいけないかな、と。相手に与える怖さがないというか、チャンスの数は確かにあるんですけど、偶然のチャンスが多いというか、もうちょっと意図的にチャンスを作れると思う。怖いところに走る選手がまだ少ないし、危険なパスがない、みたいなイメージですね。もっと相手ゴールに向かう回数を増やしていかないと、相手はメンタル的な疲労感をそこまで感じないと思うので」
8月26日の専修大学との天皇杯2回戦では先発して前半33分に先制点を挙げて、柏も2-1で勝利した。公式戦で4試合連続ゴールは、最初に柏へ移籍した2018シーズンのJ1リーグ戦で記録している。
もっとも、当時は1分3敗と柏はひとつも勝てず、最終的には17位でJ2へ降格した。ひるがえって今シーズンは天皇杯を含めて、瀬川がゴールした公式戦で4戦4勝と不敗神話も生まれつつある。
1トップに垣田が固定されているなかで、瀬川に加えて日本代表の細谷真大、8月25日にFC町田ゼルビアから完全移籍で加入したばかりのパリ五輪代表の藤尾翔太も虎視眈々とチャンスをうかがっている。
「(細谷)真大もどんどんパフォーマンスがよくなってきている。いいライバルとして、僕も負けていられないと思っています。まあ(ゴールは)気にしつつ気にせずみたいな、そんな感じでいきたいですね」
決して気負わず、温和な雰囲気を漂わせながらも、仕事を託されれば心技体をフル稼働させて最高のパフォーマンスで応える。自然体のなかに濃密な経験を脈打たせる瀬川が、絶好調の柏を縁の下で支えていく。

藤江直人
ふじえ・なおと/1964年、東京都渋谷区生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後に産経新聞社に入社。サンケイスポーツでJリーグ発足前後のサッカー、バルセロナ及びアトランタ両夏季五輪特派員、米ニューヨーク駐在員、角川書店と共同編集で出版されたスポーツ雑誌「Sports Yeah!」編集部勤務などを経て07年からフリーに転身。サッカーを中心に幅広くスポーツの取材を行っている。サッカーのワールドカップは22年のカタール大会を含めて4大会を取材した。






















