父の教え胸に「自信を持って足を振ってこい」 新潟明訓エースの夏の覚悟「1本しか来ないつもりで」

新潟明訓3年・FW田代蓮翔「もっと1本にこだわらないと成長できない」
7月25日から福島県のJヴィレッジなどで開催されるインターハイ。全国の予選を勝ち抜いた51校が日本一を懸けて凌ぎを削る大会に向けて注目選手をピックアップしていきたい。今回は新潟県予選決勝でプレミアリーグEASTに所属する帝京長岡を3-0で下し、8大会ぶり8度目のインターハイ出場を手にした新潟明訓のエースストライカー・田代蓮翔について。背番号10で1年生の時から主軸として活躍するストライカーは、憧れの父の背中を追いかけながら、創意工夫で自分の武器を磨き上げている。
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大柄なタイプではない。だが、アジリティー、フィジカル、スピードを兼ね備え、DFラインとの駆け引きから一瞬で抜け出してゴールを射抜く。シュートのバリエーションも精度も高く、特に利き足の左足から放たれる一撃は強烈だ。帝京長岡とのインターハイ県予選決勝では2ゴールを叩き出し、新潟明訓を全国へ導いた。
1トップはもちろん、インサイドハーフ、サイドハーフでも力を発揮できる万能型アタッカー。そんな田代蓮翔がサッカーを始めたきっかけは、教師として新潟でサッカー指導を続ける父・竜也さんの存在だった。
「お父さんからサッカーの楽しさを教えてもらいました」
竜也さんは高校時代、名門・武南高でサイドバックとしてプレーし、明治大学を経て、母親の故郷である新潟で教壇に立つようになった。
「昔からお父さんは『サッカーをやれ』『練習しろ』と言ったことがありません。僕が『遊ぼう』と言えば、仕事で忙しくても限られた時間の中で目一杯遊んでくれました。プレーについても何か言われることはなくて、僕がアドバイスを求めると『あの時どう思った?』と最初に僕の考えを聞いてから丁寧に教えてくれる。本当に尊敬しています」
長岡JYFCで技術を磨き、高校は「堅守速攻というスタイルが自分に合っていたことと、サッカーだけでなく勉強にも力を入れられる環境に魅力を感じました」と、新潟明訓へ進学した。
1年生からレギュラーに定着すると、選手権県予選準決勝で帝京長岡から決勝ゴールを奪い、チームを9年ぶりの全国へ導いた。昨年からは絶対的エースとして攻撃を牽引する。その成長を支えてきたのが、父から試合前に必ず掛けられる言葉だった。
「『ボールを持ったら自信を持って足を振ってこい』という言葉は、昔からずっと大切にしています」
しかし、この言葉を田代は額面通りには受け取らなかった。
中学時代までは「積極的にシュートを打つ」という意味で受け止めていたが、高校に入り、それだけでは通用しないことを痛感する。
転機は高校1年の6月。トップチーム昇格直後の練習試合だった。積極的にシュートを放ち攻撃を活性化させたものの、ゴールだけは奪えなかった。
「それまでは数を打てばいいと思っていました。でも全然入らなくて、『何がダメなんだろう』と考えた時に、1本1本が雑になっていたことに気づいたんです。FWは打てばいいんじゃなくて決めないといけない。『もっと1本にこだわらないと成長できない』と思いました」
そこからシュート練習への取り組み方が変わった。ただ本数をこなすのではなく、GKの動きを最後まで見極めること、上体を被せてボールを浮かせないことなど、一つひとつの動作を確認しながら精度を追求。質と量の両方にこだわり続けた結果、狙ったコースへ狙ったタイミングで打ち込めるようになっていった。
2年生になると、ターゲットマンだった長身FW斎藤瑛太(國學院大学)の卒業を受け、ポストプレーも求められるようになった。背負って受けるプレーや落として動き直す動きを自主練習に取り入れ、ストライカーとしての幅を広げていく。
「フィジカルが足りなかったので、筋トレと食事量を増やして1年間で10キロ体重を増やしました。ポストプレーをこなしながら、自分でも打開できる選手になりたくて、突破からのシュートや動き直して打つ形も意識して練習しました」
さらに3年生では、単に身体を大きくするのではなく、体幹を軸とした全身のバランスづくりへシフト。体質改善のため、大好きだったパンやパスタを控え、お米中心の食生活に切り替えた。その効果もあり、動き出しの鋭さや裏へ抜けるスピードはさらに増していった。
「3年生でさらに3キロ増えましたが、重いと感じることはなくて、むしろ前より動けるようになりました」
競り合いから素早く体勢を整えて裏へ飛び出す。ポストプレーを見せながら反転して背後を狙う。身体づくりと技術の積み重ねによって、ゴールへ向かうプレーの質はさらに磨かれ、エースストライカーとしての存在感を一層高めていった。
「インターハイでも、この先も『チャンスは何度も来る』とは考えません。1本しか来ないつもりで、その1本を必ず決める気持ちでプレーしたいです」
一本のチャンスにすべてを懸ける――。その姿勢は、吉田兼好が『徒然草』で説いた「一事を必ず遂げんと思はば、他の事の破るるをもいたむべからず」という教えにも通じる。覚悟と責任を持ってゴールだけを見据え、尊敬する父から贈られた「ボールを持ったら自信を持って足を振ってこい」という言葉を胸に刻む。
積み重ねてきた努力と研ぎ澄まされた感覚を武器に、田代はチームのために、自らの未来のために、夏の大舞台で渾身の一撃を放つ。
(安藤隆人 / Takahito Ando)
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』、新刊は『ともに歩き出す サッカーと家族と新しい日常』(ともに徳間書店)。講演家としても全国を回っている。元・名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター(2022年〜2026年4月)、現・國學院大學体育連合会蹴球部コーチ。



















