鎌田大地を“出さない”選択「知ってほしかった」 恩師が信じた才能「日本の常識で測りすぎては」

日本代表の鎌田大地【写真:徳原隆元】
日本代表の鎌田大地【写真:徳原隆元】

京都・東山高の福重良一監督「日本の常識で測りすぎてはいけない」

 現地時間6月14日にアメリカ・ダラスで行われた北中米ワールドカップ(W杯)オランダ代表戦で同点ゴールを決めた日本代表MF鎌田大地。魔法のようなスルーパスで異彩を放つ司令塔の「大きなターニングポイント」となったのが、ガンバ大阪ユース昇格を逃す挫折を経て進んだ京都・東山高校での3年間だ。今回、当時の恩師である福重良一監督にインタビューを実施。出会った当初の衝撃や「異質な才能」への人間的アプローチなど、稀代のプレーメーカーがいかにして形作られていったのかを聞いた。(取材・文=安藤隆人/全4回の3回目)

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 鎌田が最終学年に進級する直前の3月、新チームの基盤を作り上げるために各高校が試合に臨むフェスティバルのシーズンを迎えた。岐阜県の大垣市町杯に出場した東山高は、鎌田を中心に攻撃的なサッカーを仕掛ける一方で、守備は前線からのプレスを連動する戦術に取り組んでいた。その中で福重は、鎌田の動きに物足りなさを感じていた。

「ハードワークや切り替えの部分がまだまだでした。高校2年までは個性を伸ばす、良さを出すことを大事にしていましたが、最高学年の3年になったらそれだけでは厳しい。本人にも『やるべきことはやらないと3年は(試合に)出られないよ』と伝えました」

 大垣市町杯終了後、岐阜から静岡へ移動した先の前橋育英との練習試合で福重は、鎌田を起用しなかった。

「上手く行かないと不貞腐れる部分が見えたので、その試合は出さなかった。もちろん本人は不服そうでしたが、そこで一度考えてほしかった。試合に出るのが当たり前じゃないことを知ってほしかった」

 練習試合翌日に行われたJFAアカデミー福島U-18との試合でスタメン起用をすると、鎌田は鬱憤を晴らすかのようにハットトリックを達成した。

「まさに水を得た魚じゃないけど、もう試合を支配していましたね。キックフェイントで3人をかわしてからのシュートは圧巻でした」

 短い喝で終わったのも、鎌田は態度に出しながらも、きちんと話を聞き、自分と向き合ったからこそ。その姿を見た福重は、過去に自身を指導した恩師の言葉が重なって見えたという。

「目に見えて不貞腐れている選手でも、伝えるべきことは伝える。態度だけで人を判断するのではなく、その後の行動をきちんと見る。そこで嫌われてもいい。最後にその言葉の意味を理解してくれたら慕われる。これは僕の指導者としての恩師である大阪産業大の上田亮三郎(前監督)さんに言われたこと。嫌われてでも言うべきことは、言わないといけない。もちろん彼にとって口うるさかったり、不満だったと思いますが、彼の財産になると思ったし、彼はちゃんと耳を傾けていた。僕は信頼していました」

 初参戦の高円宮杯 JFA U-18プレミアリーグWESTで全試合に出場し、得点ランキング4位タイの10ゴールをマーク。ただチームは最下位となり、プリンスリーグ関西1部へと降格してしまったが、エースとしての責務を果たした。

 その過程の中でサガン鳥栖は、熱心に鎌田を追いかけた。当初は練習での態度を指摘され、獲得を渋られたこともあったが、福重は入学前の時と同様に根気強く教え子の良さとポテンシャルの高さを説明した。

「スカウトの方は高く評価をしてくれていたし、本当に唯一無二の素晴らしい才能を持っていることは間違いなかった。彼は愛想がなくても、しっかりとサッカーに打ち込む。もちろん本人には『損をしているところもあるぞ』と伝えていました。素直な子であることは間違いなかったので」

 恩師の熱意が実り、2015年シーズンから鳥栖に加入すると、そこから一気に頭角を現した。高卒3年目でドイツ1部アイントラハト・フランクフルトへの加入が決まり、世界に羽ばたいた。

「世界で活躍する選手は、日本の常識で測りすぎてはいけないということを、彼を通じて学びました」

 今でも鎌田と過ごした3年間は、指導者にとっての重要な経験と学びを得た時間だった。そして2022年――。カタールW杯に挑む日本代表メンバーに選出された時、心からこみ上げる喜びがあった。

「カタール大会の発表の時は、サッカー協会のライブ映像でドキドキしながら観ていました。教え子がW杯の舞台に立つことは夢でしたし、その夢を現実のものにしてくれた大地には、本当に感謝の気持ちを抱きましたね」

 教え子にW杯のチケットと旅費の恩返しも受けながら、カタールの地に応援に行った。鎌田がピッチに立つ姿に感動した。世界の強国を相手に昔と変わらぬ『そこを見ているのか』というパスやドリブルで空間を支配するプレーに凄さを感じたという。

「どんどん凄くなっていくけど、中身は本当に変わらない。たまに東山のグラウンドにひょこっと来てくれた時も練習に参加して、颯爽と帰っていくんです。『少しはみんなの前で挨拶くらいしていけよ』と思うんですけど、彼らしくて僕は好きですね」

 あれから4年。鎌田は不動の主軸として北中米W杯に挑む日本代表メンバー入りを果たした。

(安藤隆人 / Takahito Ando)



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安藤隆人

あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』、新刊は『ともに歩き出す サッカーと家族と新しい日常』(ともに徳間書店)。講演家としても全国を回っている。元・名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター(2022年〜2026年4月)、現・國學院大學体育連合会蹴球部コーチ。

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