中学生の鎌田大地が放った「まあまあいい」 練習見学での不敵…恩師が明かす衝撃の「木刀持参」

京都・東山高の福重良一監督「中田英寿のようなパスを出すな、と思った」
現地時間6月14日にアメリカ・ダラスで行われた北中米ワールドカップ(W杯)オランダ代表戦で同点ゴールを決めたMF鎌田大地。魔法のようなスルーパスで異彩を放つ司令塔の「大きなターニングポイント」となったのが、ガンバ大阪ユース昇格を逃す挫折を経て進んだ京都・東山高校での3年間だ。今回、当時の恩師である福重良一監督にインタビューを実施。出会った当初の衝撃や「異質な才能」への人間的アプローチなど、稀代のプレーメーカーがいかにして形作られていったのかを聞いた。(取材・文=安藤隆人/全4回の1回目)
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鎌田大地と福重良一監督を結びつけたのは意外な人物だった。
和歌山工業高校から大阪体育大学でプレーした福重。そこから京都サンガでJリーガーとなり、徳島ヴォルティスの前進である大塚製薬FCでプレーした。その後、1999年から初芝橋本高コーチ・監督を経て、2006年から東山のコーチとなり、2010年から監督に就任。そこからチームを全国レベルの強豪に仕立て上げていった。
監督就任2年目だった2011年。福重はある人物から進路相談を受けた。それは大阪体育大で同期だった三笘康之氏からだった。
「鎌田さんの息子さんが進路に迷っている」
三笘氏は三笘薫の叔父にあたる人物で、鎌田の父は大阪体育大において三笘氏と福重の1学年上の先輩だった。
「ほな、3人で会おう」
奈良市内の居酒屋に3人は合流し、息子・大地の進路について相談に乗ったという。
「当時、ガンバユースには、同い年に井手口陽介がいて、大地は彼のサブという序列は変わらなかった。でも、そこで大地はお父さんに『ガンバ以外のところで3年間頑張って高卒プロになって、10代のうちに海外に行きたい』と口にしていたんです。それでどの高校がいいかという話でした」
お酒が進むにつれて、話に熱を帯びてきたとき、三笘氏が鎌田の父にこう言った。
「大地が昇格できない理由が切り替えの部分やハードワークの部分だったら、福ちゃんのところ(東山)がいいんじゃない」
当時、サンフレッチェ広島ユースからも声がかかり、ユースか高校かで迷っていた状況下でこの後押しを受けた福重は、「一度ガンバの試合を見に行かせてください」と申し出た。
その年の夏のガンバ大阪ユースの練習試合に福重は足を運んだ。事前に父親から「おそらく2本目から出るよ」と言われ、鎌田がピッチに立つのを待った。
「最初見て思ったのは、小さくて、華奢な子だと。でも、いざ試合が始まって見ると出すパスの精度が恐ろしく高かったんです。『そこに出すんだ』と驚きましたし、よく観察すると試合中によく首を振って周りの状況を見ている。正直、凄く足が速い、シュートが凄い、守備がうまいという強烈なインパクトは持っていないけど、飄々と中盤から攻撃のスイッチを入れる精度の高いパスを出すんです。普通の選手が見えないところが見えていて、そこにパスを通すために身体の向き、トラップ、ドリブルの運び方を選択している。事前に何の情報もなく見たので、プレーから『中田英寿のようなパスを出すな』と思いました」
たちまち魅了された福重はその場で「是非東山に来てください」と父親に伝えたという。
「当時、ガンバの子がうちに来るなんてなかったので、正直本当に来てくれるのか不安でしたが、どうしても欲しかったのでお願いしました」
そこから一度練習参加をする運びになった。だが、ちょうど来るタイミングで腰を負傷したことで、見学のみの形に。練習後にジャージ姿の鎌田に感想を聞くと衝撃的な言葉が返ってきたという。
「まあまあいいサッカーをしますね」
驚いた福重だったが、すぐに「そうか、ありがとう」と答えた。意表を突く答えは、福重にとってより好奇心を刺激するものだった。
「中学3年生から本当に上から言われましたね(笑)。でも、あのプレーが出来て、それくらいの度胸というか、気持ちを持っている選手ならもっと面白いなと思いましたね。素直な選手もいいですが、ひと癖、ふた癖があって、時には指導者を悩ませるくらいの選手じゃないと上には行けないのかなと思ったので、ますます欲しいなと思いましたね」
指導者魂に火がついた福重は、猛アプローチをすると、その熱意に押され鎌田は東山高に進学することを決めてくれた。そして年明けの練習参加の日、鎌田は早くもその癖を全開にして福重の元に現れた。
「帽子かぶってイヤホンをつけて現れて……。参加前に京都観光をしたんでしょうね。清水寺でお土産として購入した木刀を持ってきたんです。『どうしたん、これ?』と聞くと、『欲しかったので買いました』と。もう本当に面白かったですね。そういうところもやっぱり面白いなと。物怖じしないし、でも、決して悪い奴ではない。癖があるのはやっぱり魅力でしたね」
ここから福重はプレー面で何度も驚かされることになる――。
(安藤隆人 / Takahito Ando)
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』、新刊は『ともに歩き出す サッカーと家族と新しい日常』(ともに徳間書店)。講演家としても全国を回っている。元・名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター(2022年〜2026年4月)、現・國學院大學体育連合会蹴球部コーチ。
















