容赦ないヤジも「それが好きなんです」 本物の守護神へ…鈴木彩艶が語るカルチョの“日常”

インタビューに応じたパルマの日本代表GK鈴木彩艶
インタビューに応じたパルマの日本代表GK鈴木彩艶

DAZN「Mission26」のインタビューで語った

 激動のシーズンを過ごすなか、日本代表の鈴木彩艶が身を置くのは「GK大国」と呼ばれるイタリアの地だ。所属のパルマでは世界最高峰のストライカーたちが放つシュート、そしてサポーターからの容赦ない洗礼を浴びる。DAZNの「Mission26」のインタビュー取材による連載第2回は、セリエAという特殊な環境下で磨かれる技術と、パルマでの日常について。(取材=DAZN、構成=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞/全3回の2回目)

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 魂が震えるほどの熱狂、皮膚を刺すような敵意。それこそが、カルチョの国イタリアで生きる男の日常だ。日本から遠く離れたパルマの地で、鈴木彩艶は「ゴールキーパー」という孤独かつ過酷なポジションの真髄を謳歌する。今、最も心を昂らせるのは、意外にも敵地で浴びせられる凄まじい“ブーイング”だという。

「試合前のピッチで挨拶を終えて、ゴールに向かって走っていくじゃないですか。ホームチームだったら拍手で迎えてくれるのですが、アウェーチーム側だと本当にヤジを飛ばされてブーイングされる。なんか……それを感じるのが好きなんですよね。そのブーイングを全身で浴びている感じが『これこそサッカーだな』という風に感じます。スイッチが入るというか。イタリアらしいと言ったら、そういったところから感じますね。生きている感じを」

 2024-25シーズンにシント=トロイデンから移籍して2年目。今、情熱を持つサポーターたちの野次が、アドレナリンに火をつける合図となる。罵声を浴びるたび、集中力は研ぎ澄まされ、新たな力が宿る。すべてを懸けて応援するファン・サポーターがいるからこそ、すべてを懸けて守る価値がある。感情のぶつかり合いこそが、求めていたプロの戦場だった。

 しかし、熱狂だけで生き残れるほどセリエAは甘くない。この地は、かつてブッフォンやゾフといった伝説を生んだ守護神の聖地。日々対峙するのは、一瞬の隙も見逃さない世界最高のストライカーたちだ。特に鈴木を驚かせたのは、エリア外から飛んでくるミドルシュートの破壊的な質だった。

「1つ言えるのは、エリア外からのシュートの質が高いです。そこは非常に感じる部分があります。今シーズンも毎節『そんなシュートあるんだ』みたいなシュートが何本も飛んできました。シュートに対する準備を良くしなければいけないというのは、上に行くためにも強く思います。(昨年11月に)負傷したミラン戦もそうでしたし、直近の(復帰戦となった3月の)トリノ戦でもミドルでやられています。そこは本当に防ぎたいです。今後の課題として、さらに高めていきたい部分です」

 課題に立ち向かうため、パルマのイタリア人コーチと二人三脚で肉体も改造。ストイックに「細部へ執着」し、高みを目指し続ける。

「一番感じる部分は『全てにおいて細かいな』ということです。キャッチング1つにしても、セービングにしても、ポジショニングにしても、全てが細かい。周りの人が見たら素晴らしいセーブだね、と思うシーンでも、コーチは『ここもうちょっと改善できたんじゃないか』と言ってくれます。常に細かく分析することが、より上に行くために必要。今は、シュートに対してただ1歩で踏み切るんじゃなく、足を細かく運んでから踏み切る練習を繰り返しています。すぐに良くなる部分ではないけれど、練習を重ねるしかない。僕自身、こういう分析は好きですし、日本にいた時よりもクリアにできている感覚があります」

 極限まで追い込む日々。一方で鈴木はパルマの街、歴史を心からリスペクトする。スタジアムに1歩足を踏み入れれば、かつてこの地を熱狂させた伝説の日本人、中田英寿の影が今も色濃く残っている。

「室内アップ場の横の壁に中田ヒデさんの写真がデカデカと貼ってあるんですよ。いつも視界に入れながらアップするので『ここで活躍されてたんだな』というのは肌で感じます。パルマは本当にいい街です。人の温かさ、サッカーに対する情熱が素晴らしいです。街中でも本当に気軽に『頑張れよ』と声をかけてくれるんです。一度、レストランでお会計しようとしたら、シェフたちが『もう払っておいたよ』と言ってくれたことがありました。サポーターとチームが密着していますね」

 愛するクラブ、愛する街。その思いはピッチ上でのパフォーマンスへと昇華される。守備だけでなく、世界を驚かせる圧倒的な飛距離を誇るキックもまた、パルマの戦術に不可欠な武器となった。

「キックは自分の武器。低い弾道で飛距離を出せるので、相手にとっては本当に嫌なはず。一発で状況をひっくり返せるシーンを増やしていきたい。でも、やっぱりゴールキーパーの本質は守備。守備があっての攻撃だということを忘れずにやりたいです」

 守ることは、生きることそのもの。イタリアの空の下、野次を力に変え、ミドルシュートの嵐をはね退けながら、鈴木は本物の「守護神」へと進化を遂げた。北中米ワールドカップ(W杯)にも必要不可欠な「守護神」。鈴木がゴールマウスに立ち続ける限り、スタンドの熱狂が冷めることはないはずだ。

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