試合中に味方と激しい言い合い「ありがたい」 ドイツ1部で残留争い…日本人の現在地

ザンクト・パウリの安藤智哉(左)と藤田譲瑠チマ【写真:picture alliance/アフロ】
ザンクト・パウリの安藤智哉(左)と藤田譲瑠チマ【写真:picture alliance/アフロ】

ザンクトパウリ安藤智哉、藤田譲瑠チマ、原大智の現在地とは?

 ブンデスリーガ残留争いの渦中にあるザンクトパウリで、日本人コンビの存在感が着実に高まっている。

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 2連勝後にホームで迎えた25節フランクフルト戦は0-0の引き分け。続く直接残留を争うボルシアMG戦を0-2で落としたのは痛かったが、ここ最近はどの試合も内容は悪くはない。直近4試合で2勝1分1敗と数字はいい。

 そんなチームでDF安藤智哉は欠かせない選手になっている。インターセプトからそのままボールを運び出す力強さ、積極的なプレス、そして対人の強度。ブンデスリーガのフィジカル基準のなかでも当たり負けしない安藤は、フランクフルト戦後に自身のパフォーマンスについて次のように振り返っている。

「まだまだ改善するところは多いですけど、1、2か月前と比べると確実に順応してきている感覚はあります。本当に毎日レベルアップしていかないといけないと思っていますし、そのためにここに来ました。チームも自分もレベルアップできるように、日々のトレーニングを大事にしていきたいです」

 安藤が言う1、2か月前の段階では、守備でのハードマークはすでに見られていたが、攻撃面での関与はまだ多くはなかった。ここ最近は最後尾からの鋭いパスやスペースを突く攻め上がりが効果的になっているのが印象的だ。

 フランクフルトは守備時に2トップ気味の配置を取るため、その脇にスペースが生まれやすい。構造のずれを突き、安藤は自らボールを持ち運ぶことで局面を前進させた。相手のプレスの矢印を外しながら前に運べるセンターバックは、大きな武器となる。

 安藤も手ごたえを口にする。

「あそこで数的有利を作れるのは分かっていたので、そこは想定通りでしたね。そこから運んでチャンスが作れましたし、オフェンス面でもまだまだ良くなっていける部分があると思います」

 一方で、この試合ではイエローカードをもらった直後の競り合いで、少し不運な形で相手にファール。危うく連続でイエローカードをもらいそうになっただけに、ここは反省材料。リスクケアで途中交代となったが、本人も「クリーンに奪い切ることが大事」と振り返っていた。強度とリスク管理のバランスは今後の課題と言えるだろう。

 中盤ではMF藤田譲瑠チマが徐々に躍動感あるプレーを発揮できるようになってきている。ボールを持てばスルスルと運び、相手の圧力をいなすドリブルで局面を打開する。後方からのチャージを跳ね返しながら複数人をかわすなど、個で打開する力を示しているのは頼もしい限り。

「このポジションでプレーする時間も長くなってきましたし、少しずつ慣れてきている感覚はあります。ただきょうの試合で言えば、もう少し攻撃に絡みたかったですね。もっとボールを引き出して、自分がボールに触る回数も増やさないといけない」

 中盤で1人、2人と相手を剥がすところはできるようになっている。本人も語るように課題はその先だ。

「その後のプレーですね。次のプレーの質をもっと上げていきたい。きょうも最後のラストパスのところを、もう少し落ち着いてできればよかった。そこが今の課題かなと思います」

 いいところに顔を出せるようになっているし、そこにボールが出てくることも増えている。チームメイトが藤田を探すシーンは頻繁になってきている。それだけにいいプレーだけではなく、決定的なプレーが求められる。

 フランクフルト戦では終了間際の好機でラストパスが少し乱れ、ボルシアMG戦では左サイドからの折り返しにファーポストでフリーでボールを受けるも、いい形でシュートを打てず、先制点のチャンスを逃した。パウリが残留を果たすために、そして藤田がもう一回り成長するために、ここは避けては通れないテーマだろう。

 一方で試合中に味方と激しく言い合う場面が増えているのはポジティブなところだろう。言い争ってもそれで雰囲気が悪くなるのではなく、理解を深め合えている。

「自分がまだ子どもっぽいところもあるんですけど、経験のある選手たちは自分の要求もちゃんと組み込んで、受け止めてくれて、次のプレーに生かしてくれる。そういうところはすごくありがたいです」

 ここからの残留争いを戦ううえで、パウリに求められるのはどのように試合を勝ち切るかになる。試合のなかで主導権を握る時間帯は作れている。ゴールチャンスもある。ただ、パウリの総得点23は1部18クラブでワースト。

 藤田が「ボックスに入っていく回数を増やさないと得点に絡めない」と語るように、どのようにゴール前の厚みを生み出すかが、チームが抱える大きな課題。そんなもう一歩を埋める存在として期待されるのが、FW原大智だ。チーム全体としてボックス内の人数が不足しがちななか、フィニッシュ局面で違いを作れるストライカーの存在こそ、いま熱望されている。

 今冬パウリに加入した原は、これまで3試合に途中出場。いずれも短い出場時間にとどまっている。

「練習ではしっかりと力を出しているし、いいプレーを見せる場面もある。だから、また彼を投入できる試合が来るかもしれないね。残り20分ほどの時間帯で使うオプションとしては、十分に考えられる」

 アレクサンダー・ブラッシン監督はその資質についてこんなポジティブなコメントを残してはいる。ただ、どうしてもゴールが必要なボルシアMG戦でも原が呼ばれることがなかった。練習からアピールを繰り返して、ゴールへの飽くなき飢餓感を見せて、原を起用したらゴールが生まれるかもしれない、という感触を監督に植えつけてほしい。

 残留争いは過酷だ。そう簡単に抜け出せたりはしない。どこも必死だ。パウリが2年連続残留を果たすために、3人の日本人選手がどんな働きを見せるのかに注目が集まる。

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)



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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)取得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなクラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国で精力的に取材。著書に『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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