17歳で鹿島とプロ契約も「何も始まらない」 芽生えた自覚…上田綺世に「続かないといけない」

鹿島でプレーする吉田湊海
3月11日に愛知県のCSアセット港サッカー場で行われたJF/Jリーグポストユースマッチ・U-19Jリーグ選抜vs全日本大学選抜の一戦。Jリーグで出場機会の少ない若手選手に実戦の機会を創出するために昨年発足したポストユースマッチは、今回、高卒ルーキーを中心に選出された。
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ここではDF常藤奏(中央大、柏レイソル内定)、坂井悠飛(福岡大、アビスパ福岡内定)、MF前田快(神奈川大、福岡内定)、古谷柊介(東京国際大、柏内定)、FW平尾勇人(日本大、東京ヴェルディ内定)とすでにプロ入りが決まっている選手を始め、プロ入り濃厚な選手がずらりと揃う全日本大学選抜との一戦で輝いたU-19リーグ選抜の選手の紹介をしていきたい。
今回は鹿島アントラーズ期待の17歳ストライカー・吉田湊海について。今回のメンバーで唯一の高校3年生だが、彼の心の中にはプロサッカー選手としての自覚と責任が芽生えていた。
MF小西脩斗(国士舘大)以外は全員大学3年生のメンバーが揃う全日本大学選抜に対し、吉田は貪欲なストライカーとしての本能と前への推進力を前面に出し、前半のみの出場ながら両チーム最多の4本のシュートを放った。その3本ともゴールを予感させるもので、結果としては1本もゴールに結びつけなかったが、このシュートに至る前での一連の動き、技術、メンタルはどれもハイクオリティーのものだった。
1本目は開始早々の前半3分。前線から激しいプレスを仕掛けてこぼれ球を拾うと、GKデューフ・エマニエル凛太朗(流通経済大)が前に出ていたのを見逃さず、相手陣内のハーフウェイライン付近から迷わず右足を一閃。ボールはわずか枠の外だったが、「見えていたので狙った」と思い切りの良さとゴールへの意欲を一瞬の判断で見せたストライカーらしい一撃だった。
2本目は18分、右サイドを突破したDF松本果成のクロスに反応して右ポケット(ペナルティーエリア内の右のスペース)にトップスピードで入りこむと、ブロックに来たDFが届かない絶妙なスペースにボールを正確なファーストタッチで置いてから素早く右足シュート。だが、これはGKデューフが鋭い飛び出しからビッグセーブ。
3本目は23分、中央でボールを受けると突破すると見せかけて、ゴール右前のスペースに抜け出したFW古屋歩夢(ベガルタ仙台)へ絶妙なスルーパス。GKと1対1になった古屋のシュートはGKデューフに阻まれ、そのこぼれにいち早く反応して狙うも素早く体勢を立て直したGKデューフの連続ブロックに阻まれた。
そして4本目は45分、DF村上慶(横浜Fマリノス)のプレスからボールを奪うと、松本の浮き球のクロスに対し、2本目と同じように一瞬のスピードで右ポケットのスペースに入り込み、ゆっくりと落ちてくる難しいボールだったが、ジャンプをしながら胸トラップでシュートを打てるポイントに一発で落とすと、そのまま右足で強烈なシュート。しかし、再三ビッグセーブを連発していたGKデューフに、このシュートも防がれた。
「今日はシュートの感触的にはあんまり良くなくて、自分のイメージではファーに強く打ち込みたかったのですが、ちょっと焦ってしまった感じがあって、うまく足に当たらなくてゴロで行ってしまった。ああいう場面で落ち着かないといけないし、FWである以上、試合に出たら絶対にゴールを取らないといけないと思っているので、今日は納得はいきません」
試合後にこう口にするのは当然のことだった。ストライカーたるもの、過程がよくてもゴールという結果を出せなければ、満足とは程遠い出来になる。特に彼のように貪欲かつ血気盛んなストライカーであれば尚更だ。
チームや場所が変わっても、その気概を決して失わない姿勢こそが吉田の魅力でもある。眼をギラつかせながらハキハキとした口調で話す彼の中で、今年に入って大きな心境の変化があったという。
「去年からトップチームの方に参加をしていたのですが、(昨年12月に)プロ契約を交わしてからは、自覚と責任感が芽生えたように感じます。ユースの時はそこまでプレッシャーを感じなかったのですが、こうしてプロになって背負っているものは大きくなりました」
常勝軍団・鹿島のエンブレムを背負う者として、勝利に導くゴールを決める者として。どの舞台でも自覚を持ってプレーすることは当たり前のことだった。
「今年はまだ試合に出られていないのが現状で、試合に出ているFWの選手たちを越えていかないといけない。今感じているのは守備のうまさで、間を閉めながら自分で奪いに行くだけでなく、味方に取らせる守備だったり、ボランチのサポートに入ってプレスバックしたりするなど、本当に奪うことをきちんとやりながらも点を取っている。どちらかではなく、どちらも凄いので、そこは見習っていかないといけないし、そうしないと越えられないと感じています」
点を取ることができれば全てOKではない。全てにおいてチームの勝利に貢献する。それこそが常勝軍団の看板を背負うストライカーの責務であり、吉田がならなければならない姿だ。
「上田綺世選手はアントラーズからA代表の中心選手になった。それに続かないといけないと思っているからこそ、本当に試合に出なきゃ何も始まらない。そこは貪欲に、しっかりとフォーカスを当ててやっていきたいです」
その目はさらにギラついていた。さらに強くなったストライカーとしてのオーラを放ちながら、彼はミックスゾーンを後にした。
(安藤隆人 / Takahito Ando)
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』(共に徳間書店)、など15作を数える。名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターも兼任。


















