司令塔→クラッシャーで覚醒「どうせ無理だろう」 初の選抜入り…J注目の逸材「ベリンガムのように」

産業能率大3年の日隠ナシュ大士【写真:安藤隆人】
産業能率大3年の日隠ナシュ大士【写真:安藤隆人】

産業能率大3年MF日隠ナシュ大士「本当に楽しい」

 3月1日に関東B選抜の優勝で閉幕したデンソーカップチャレンジ刈谷大会(通称・デンチャレ)。ここではデンチャレ本戦で目に留まった選手の物語を紹介していく。今回は決勝で関東A選抜を1-0で撃破し、見事に優勝を飾った関東B選抜のボランチ・日隠ナシュ大士について。彼にとってデンチャレはサッカーの楽しさを感じる毎日だったという。

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「毎試合、強度の高い潰し合いやハイレベルな攻防ができるので、本当に楽しいです」

 この言葉通り、日隠の持ち味は屈強なフィジカルと豊富な運動量を生かした激しいプレスと、球際の強さ、そして奪ったボールをパワーと技術で運んでいくドリブル。ミドルゾーンを制圧する存在として、関東B選抜でも大きな存在感を放った。

 堀越高時代はボランチとしてボールを巧みに捌くイメージだった。技術レベルが高く、しっかりと周りと連動しながらボールを動かしていく堀越の中で、スルーパスでチャンスを作っていく存在だった。それが大学に進むと中盤のクラッシャーとしての能力を示すようになった。この変化を聞くと、まっすぐにこう答えた。

「実は高校時代の時から『このままじゃ足りないな』と薄々気づいていました。もっと明確な武器を身につけないと上にはいけないなと。それで大学1年では同じボランチの同級生2人が試合に出ていたので、より『どうしたら彼らに勝てるか』を考えるようになりました。そこでもっと守備力を身につけようと、守備にウェイトを置いて練習をしていたらどんどん試合に絡めるようになりました」

 1年生の押川優希、岩﨑大翔らが出番を掴んでいく中で、ボール奪取力を身につけたいと日本代表の遠藤航、佐野海舟、元フランス代表のエンゴロ・カンテ、イングランド代表のジュード・ベリンガムのプレーを食い入るように見つめた。

「潰せる選手は最後に迷わずにガッと前に出て、ボールを体ごと刈り取るような選手。そういう選手じゃないとレベルの高い相手からボールを奪えない。僕もフィジカルを生かしてそうならないといけないと思いました」

 普段の練習からアタックに行くべきところはアタックし、かつただ闇雲に行くのではなく、相手のタイミングや変化に対応できるように、ステップワークやアジリティーなど細部に至る部分までイメージとトライを繰り返しやり続けた。

「僕の中で映像を見て、トライしていく中で、『止まる、止める』の2つの言葉をキーワードにしてきました」

 日隠の言う『止まる』はアプローチに行って、相手が変化した時に一度止まって、そこからもう一度アプローチに行くことを指す。

 普段の自主トレでマーカーを置いて、それを相手と見立てて、そこに素早く一発でアプローチをしたり、ガッと行って一度止まってから、もう一度ガッとアプローチに行ったり、『止まる』をコントロールすることで対応力を磨いた。

 もう1つ、『止める』はシンプルにトラップ、ファーストタッチのこと。360度から来るボールに対し、ワンタッチで相手を剥がしたり、一歩前に出たり、逆に足元に収めてキープをして時間を作ってから展開するなど、基礎技術をもう一度見直した。

 この2つを磨いたことで、守備力は格段に増し、チームにおいて攻守の要として欠かせない存在へと成長をして行った。現在は複数のJクラブから熱視線を集め、関東B選抜入りは当然と言えるものだった。

「守備力を磨いていくうちに大事なことに気づいたんです。それは『ボランチって何でもできるポジションなんだな』ということなんです。攻撃がうまく行かない時は守備に徹して、守備がリズムに乗ったら攻撃に転じられる。無数のプレー選択ができて、守備と攻撃どちらもできる。何でもできるポジションだからこそ、ベリンガムのように守備が出来て、推進力もあって、かつフィニッシュに関わる仕事もできるなど、『何でもできる選手』にならないといけないと思って取り組んでいます」

 冒頭に言った「楽しい」という言葉は、ボランチというポジションに大きな可能性を見出すことができ、それを具現化するために毎日取り組めているからこそ、心の底から出る言葉だった。

「ボールを奪った瞬間、ゴール前に運んで行った瞬間、パスが通った瞬間。どれも楽しい。僕はこれまで高校、大学と選抜に入ったことがなかったので憧れていましたし、どこか『どうせ俺は無理だろう』という諦めがちょっと入ってしまった時期もありました。でも、どんどんボランチの奥深さに気づけば気付くほど、自信も向上心も増して行って、今回初めて選抜に入ってデンチャレに実際に出てみて、想像以上に楽しかった。この気持ちでやり続けて、もう1つレベルアップしてやっていきたいです」

“何でもできるボランチ”という明確な理想像を追い求めて。日隠はこれからも日々の練習からイメージを膨らませながら、トライ&エラーを繰り返して経験を積み重ねていく。

(安藤隆人 / Takahito Ando)

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安藤隆人

あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』(共に徳間書店)、など15作を数える。名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターも兼任。

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