J1で衝撃、通用しなかった「ガムシャラさ」 プロの舞台で進化…開幕前に「相当キツかった」

東京V内定の平尾勇人が身につけた武器「駆け引きの幅が広がりました」
3月1日に関東B選抜の優勝で閉幕したデンソーカップチャレンジ刈谷大会(通称・デンチャレ)。ここではデンチャレ本戦で目に留まった選手の物語を紹介していく。今回は決勝で関東Bに敗れた関東A選抜のFW平尾勇人(日本大)について。すでに内定先の東京ヴェルディでも躍動を見せるストライカーがプロで身につけた強烈な武器とは。
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デンチャレを通じて、関東A選抜が見せた前からのプレッシングは強烈だった。主役は平尾と本間凛(国士舘大)。この2人が見せるプレスはタイミング、スピード、角度、強度どれをとっても一級品で、相手にとっては脅威以外の何物でもなかった。
なかでも平尾のプレスは昨年と比べても、とてつもない進化を遂げていた。四日市中央工業高時代から屈強なフィジカルとスピード、溢れ出る献身性を武器にした前プレは猛威をふるっていた。
大学に進学してから、ポストプレー、突破力、シュートをさらに上乗せしたことで、Jクラブの争奪戦の末に昨年8月に早くも東京V入りを勝ち取った。そこからすぐさまJ1デビューを果たし、リーグ6試合(2試合スタメン)出場して1ゴールをマーク。今年も開幕戦で途中出場を果たしている。
駆け引きをしながらプレスに行き、相手を追い詰めて苦し紛れのパスを出させたり、そのまま奪ってショートカウンターを仕掛けたりと、明らかに相手を意図的に追い込んでから相手のミスを誘発させている。
「多分、ヴェルディに行っていなかったら今もガムシャラに追いかけるだけだったと思います。ヴェルディの選手は本当に後ろが上手い選手ばかりだし、紅白戦でも公式戦でもCBのレベルが高いので、考えながらプレスに行かないとダメなんです。賢いCBは僕がプレスに行っているはずなのに、なぜか『1対1をさせられている感覚』になるんです。どれだけ前プレに行っても、どちらに行くかわからないところにボールを置かれて、僕が迷った瞬間にパスを出したり、奪いに行く瞬間にはがして前に運んで行ったりする。あっさりと抜かれたり、交わされたりすることが練習参加で多かったんです」
衝撃だった。一流のプロはガムシャラさだけでは通用しない。相手DFとの駆け引きだけではなく、チームとしてのプレスの掛け方やボールの奪いどころなど戦術を把握し、かつその場面で対峙する相手だけではなく、後ろの味方の立ち位置や身体の向きなどを把握してスピーディーに明確な狙いを持って寄せていかないといけない。
一瞬にして多くの情報収集と情報処理を行わないといけない世界だと即座に感じた平尾は、城福浩監督やコーチ陣、中盤の選手などとコミュニケーションを取りながら、「チームに必要とされるプレスの掛け方」を学び、プレーに落とし込んでいった。
「重要なのがプレスに入る前。自分のマークにボールが入る前に相手と味方のボランチの位置を両方見て、どこにいるのか、どう構えているのかを把握してから、どのコースを切るべきかを考えます。時にはプレスを掛けた際にも後ろを見て、より必要なプレスをかけることを意識するようになりました」
さらに今年のキャンプで東京Vは徹底した走力強化を行った。もともと走力には自信があったが、平尾が「相当キツかった」と振り返るように、内容はかなりのハードで、かつ目に見える成果があったという。
「スプリント回数、最高時速なども数値が去年より上がりました。シンプルにスピードが上がったことと、ストップ&ダッシュもスムーズに行えるようになったことで、プレスに行く際により駆け引きの幅が広がりました」
この言葉通り、プレスに行く際に相手の出方によっては一度止まって、そこから爆発的な加速で奪いに行く形が平尾の武器に加わった。
「今年に入ってからわざと1回、相手に余裕を持たせると言うか、トラップさせてからそのトラップの仕方によって寄せ方を変えることを意識するようにしています。例えば、右利きの選手は右足にボールが行ったら、オープンに持つことが多いので、そこでもう1個横に寄せ切ることを意識しています。もし、オープンに持たなかったら一度プレスを止めて、トラップした方へプレスの矢印を変えて行く。このプレス変化がよりスピーディーに強度を維持して出来るようになってきていると感じています」
デンチャレで存分に披露した「賢いハイプレス」。惜しくも優勝とはならなかったが、3月15日に開催される「DENSO CUP SOCCER 第25回大学日韓(韓日)定期戦」に参加する全日本大学選抜のメンバーに選出された。
「大学でも、プロでもロックオンしたら逃げられないプレスをどんどん仕掛けて、奪って自らの得点やチームの得点につなげていきたいです」
進化を止めないストライカーが生み出す迫力は、燃え盛る闘争心と冷静な頭脳に裏打ちされている。
(安藤隆人 / Takahito Ando)
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』(共に徳間書店)、など15作を数える。名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターも兼任。




















