12歳で直面した不合格「そんなはずない」 予期せぬ挫折も…母の一言で“逆転”エリート街道

12歳で味わった挫折がサッカーエリートへの転機に
女子サッカーの未来を考える――。WEリーグとFOOTBALL ZONEの共同インタビュー企画「WE×ZONE~わたしたちがサッカーを続ける理由~」で、日々奮闘する選手たちの半生に迫る。第5回は、ちふれASエルフェン埼玉の樋口梨花、19歳。2024-2025シーズン、JFAアカデミー福島から特別指定でプレーし、今シーズン正式加入。12歳で味わった悔しさをバネに歩んできたサッカー人生について率直に語った。(取材・文=砂坂美紀/全4回の1回目)
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「めちゃくちゃ悔しかったです」
樋口梨花がプロサッカー選手を目指すためのターニングポイントになったのは、浦和レッズレディース(現・三菱重工浦和レッズレディース)の下部組織のセレクションで不合格になったことだ。当時を振り返ると、いつもの明るい表情が少し曇った。
「小5からジュニアユースの練習に呼ばれて、参加させてもらっていたので、合格すると思っていました。その分、ショックは大きかったです」
12歳の少女時代に受けた挫折感を率直に吐露する。自信を持って臨んだが、一次試験で不合格。「まさか、そんなはずがない」と信じられない気持ちでいっぱいだった。
この予期せぬ挫折が、彼女のキャリアを大きく変えることになる。落ち込む彼女に、母親から思わぬ提案があった。「JFAアカデミー福島(の入校選考試験)を受けてみない?」と、優しく声をかけてくれた。樋口は「受けたい。ダメ元だと思ってやってみる」と、挑戦を決意。
見事に合格し、親元を離れてサッカーのエリート街道を歩む6年間が始まった。
初めての寮生活も、彼女にとっては「お泊まりに行く感覚でワクワクしていました」と、楽しい生活となった。ホームシックになることもなく、JFAアカデミーの同期5人とは、学校生活も含め、常に寝食を共にする濃密な時間を過ごした。
しかし、入校直後の日々は苦悩の連続であった。全国から集まったエリートたちは、すべてのレベルが高い。2期上にはFW松窪真心(ノースカロライナ・カレッジ)、1期上にはMF谷川萌々子(バイエルン・ミュンヘン)やDF古賀塔子(トッテナム)ら今やなでしこジャパン(日本女子代表)で活躍する先輩が在籍していた。「同じ中学生とは思えない」と感じ、彼女は「頭がついていかない」「ボールを受けるのが怖くなる」という状態に陥ってしまう。
「全員のレベルが高いので、判断のスピードが違いすぎるし、体がついていかない感覚でした。『ボールが来ませんように』と願うほど、最初の頃はついていくのが精一杯でした」
この危機的状況を乗り越えたのは、父親から受け継いだ“負けず嫌い”の精神だ。父はサッカー経験者で高校時代には全国大会に出場した経験もあり、「いつも的確なアドバイスをくれます」という。
「父は『負けず嫌いであれ』『やると決めたことは最後までやりなさい』と、教えてくれていました。1人で自主練をしている時も条件や目標を決めて、それが達成できるまでは帰らないように工夫をしていましたね」
転機となったのは、中学1年生の夏。出場機会が増え、手応えを掴んだ。「その環境に慣れたら、すごく楽しくなったんです。最初は怖かったけど、全部が楽しいという感覚に変わりました」と笑顔を見せる。憧れていた浦和レッズレディースジュニアユースに勝利したことも自信につながった。

谷川萌々子とコンビを組むことでレベルアップ
樋口は高いレベルのサッカーに触れて大きく成長していった。一番大きかったのは、ボランチでコンビを組んでいた谷川の存在だ。当時から突き抜けた才能を持っており、年代別代表でも活躍していた。
「萌々子さんの攻撃面でのアイデアやシュート、ゴールへ向かう姿勢など隣ですごさを感じながらプレーしていました。パスかシュートどちらを優先するのかも的確で、『そこにパスをするんだ』という斬新なアイデアに驚きました。ポジショニングやタイミング、動き方など攻守いろんな要素が備わっているので勉強になりましたし、自然とレベルアップできました」
自分らしい武器を磨くことも樋口は忘れなかった。今や彼女の代名詞となっている両足からの正確で強烈なキック力は6年間の鍛錬によって身につけたものだ。入校前は利き足ではない左足でのキックが苦手だったという彼女は、中学時代に見汐翔太コーチ(現・JFAアカデミー福島監督)のもとで徹底的に練習を繰り返した。
「毎日、左足と向き合ってトレーニングしました。最初は全然蹴れなくて苦労しました。見汐コーチからどんな修正点があるのかを、映像を使ってフォームを分析してもらって視覚的にも理解して。できるようになるまで練習を重ねました」
高校3年間の指導者であった山口隆文監督からは、彼女は常に「積み重ねが一番大事だ」という言葉を聞かされてきた。この教えは、彼女の毎日の練習への取り組み方を根本から変えた。
「ただのパスコン(パス&コントロール)を、どれだけイメージを持って意識してできるかを山口監督から課題としてもらい、練習を続けました。おかげで、WEリーグでも落ち着いてプレーできます。それに、アカデミーではマナーセミナーや農業体験などを通じてサッカー以外からも多くのことを学べました」
技術、戦術、そして人間性をアカデミーでの6年間で身につけた。挫折を経験したからこそ辿り着いた先は、かけがえのない時間となった。多くの出会いと経験が、彼女のサッカー人生にとって自信を持ってプレーできる揺るぎない土台となっている。
(FOOTBALL ZONE編集部)





















