優勝争いに「絡んでくる」2チーム 識者がJ1開幕節をチェック…注目は“武者修行”帰りの21歳

昨季王者の鹿島はFC東京にPK戦で敗れた
明治安田J1百年構想リーグが開幕した。EASTではFC町田ゼルビア、浦和レッズ、川崎フロンターレ、東京ヴェルディの4チームが勝ち点3を獲得した。一方で昨シーズンのJ1王者である鹿島アントラーズはアウェーでFC東京と1-1の引き分けに終わり、この大会の特別ルールであるPK戦に敗れる形で勝ち点1にとどまった。その鹿島と最終節まで優勝争いを演じた柏レイソルは川崎に前半25分までに3失点。そこから反撃して1点差に迫ったが、三度突き放されて3-5で開幕戦を落とした。
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本格的なシーズン移行に向けた半年間のイレギュラーな大会であり、記録も通常のリーグ戦とは別の扱いになる方針が発表されている。チーム作りの時間と捉えることもできるが、EASTは新監督のクラブが“昇格組”の水戸ホーリーホックしかなく、6クラブで監督交代があったWESTよりも継続路線のチームが多い分、未知な要素が少ないことは確かだ。またJ1のクラブにとってはACLエリートの出場枠がかかる中で、そこに対する本気度が多少なりとも結果に影響するかもしれない。
通常のリーグ戦より積極的な選手起用が期待されるハーフシーズンだが、さすがに開幕戦ということもあり、どこも本来の主力メンバーと見られる選手がスタメンにずらりと並んだ。もちろん主力に怪我人が出ているポジションは代わりの選手がチャンスを得ることになるが、全体としては通常と大きく変わっていない様子だ。
浦和と対戦した昇格組のジェフ千葉は4-4-2の左サイドハーフで、17歳のMF姫野誠がスタメン起用され、荒削りながら鋭い仕掛けで浦和の右サイドを脅かした。姫野は初舞台で楽しかったことを認めながら「結果を残せなかったのが現実なので、それをしっかり受け止めて、結果を出せるように頑張りたい」と語った。
浦和では大卒ルーキーの肥田野蓮治が松尾佑介と2トップを組み、特別指定選手だった昨年の岡山戦に続き、公式戦で2試合連続となるゴールを決めるなど2得点に絡んだ。
またキャンプで評価を上げた昇格2年目の19歳FW照内利和が終盤に投入され、攻守にインパクトのあるプレーを見せた。関根貴大からのクロスを見事に押し込んでプロ初ゴールを決めたかに見えたが、直前に味方のイサーク・キース・テリンが触っており、惜しくもオフサイドに。「もう来たという感覚で構えていました。目の前でイサークが触って、オフサイドかどうかの感覚も正直分からなかった」と振り返る照内だが、「もっと出場機会を増やして、結果もついてくるようにしていきたい」と飛躍を誓った。
横浜F・マリノスでは開幕ベンチ入りの22歳GK木村凌也が、スタメンだった朴一圭の負傷により前半21分から出場。クリアが甘くなったところから与えたFKを相馬勇紀に直接決められた。その失点シーンもクロスだと判断したところで、うまく反応しきれなかったが、その後は落ち着いた対応を見せ、チームの反撃を後押しした。
川崎は21歳の松長根がスタメン出場
ホーム開幕戦で柏に打ち勝った川崎は、ディフェンスラインに複数のアクシデントが出ている中で、福島ユナイテッドでの“武者修行”から帰ってきた21歳の松長根悠仁がセンターバックで先発。セットプレーから決勝点となった4点目を決めるなど、存在感あるプレーで勝利を支えた。サイドバックを本職とする松長根にとって柏の勢いを真に受けてしまうところもあり、失点シーンは反省点も残る。しかし、それ以上に自信が大きいだろう。
長谷部茂利監督も「キャンプから彼の存在感、アピール感が非常に良かったと思っています。それだけではなくて、プレーそのものも非常に良く、今日のチャンスは彼自身でつかみました。私だけでなくコーチや選手からも信頼を得て、今日の出場になったと思っています」と前向きに評価。その上で「失点のところは良い選手に背後を取られましたね。あの場面で言えば、ボールホルダーにどれだけプレッシャーが掛かっていたのか。そこは非常に大事です。その判断とプレー、状況を見て良いポジションを取っていかないといけない」と語り、失点シーンの対応への注文も忘れなかった。
さらに後半29分には19歳のDF野田裕人が三浦颯太に代わり起用されると、右サイドバックでスタメン起用された新戦力の山原怜音が左に回り、野田が右に入った。柏は終盤の反撃に向けて左ウイングバックに22歳の山之内佑成、川崎から加入した山内日向汰を同時投入し、同サイドに攻撃のパワーをかけた中で、4バックの右側にとって難しい状況だった。山内には3点目を決められたが、そこから耐えて後半アディショナルタイムの脇坂泰斗によるトドメの一撃につなげたという意味でも、重要な仕事を果たしたと言える。
城福浩監督が5年目のヴェルディは“昇格組”の水戸ホーリーホックを相手に、ホーム開幕戦の勝利に向けて10番でキャプテンのMF森田晃樹を筆頭に既存の主力メンバーがスタメンの大半を占めた。その中で大卒2年目の内田陽介が右ウイングバックを務め、谷口栄斗が移籍したセンターバックでは加入2年目の鈴木海音が起用され、経験豊富な宮原和也、新たなディフェンスリーダーとして期待される林尚輝とバックラインを組んだ。
立ち上がりに相手のオウンゴールを誘い、幸先よくリードを奪ったヴェルディは後半の早い時間帯までに3得点。そこから加藤千尋のゴールを許したが、水戸の枠内シュートはその1本だけ。鈴木を含めて勝利を支える働きを見せた。失点シーンに関しては宮原と林のところで連携に課題が出たが、次節以降に向けて修正は可能だろう。終盤には日体大に在学中のFW平尾勇人が投入された。シャドーのポジションで守備のタスクをこなしながら右サイドでチャンスを作り、新井悠太のクロスバー直撃弾を演出した。ヴェルディは堅守がベースになるが、FWに目立つ補強がなかった中で、加入2年目で奮起が問われる寺沼星文とともに、平尾にかかる期待は大きい。
そのヴェルディに敗れた水戸はJ1の洗礼を浴びた格好だが、川崎のアカデミー出身で日大に在学中の五木田季晋がいきなり開幕スタメンで起用されるなど、樹森大介監督とクラブの方針が伝わりやすい開幕戦の起用法だった。J2優勝を支えた既存のメンバーも含めて、J1のインテンシティーやクオリティーに苦しむ時期が当面あるかもしれないが、本格的に残留以上を目指す26-27シーズンに向けて、チームをしっかりと積み上げていくことを期待したい。
開幕戦の結果と内容だけで優勝候補を絞り込むのは時期尚早だが、ACLエリート出場という明確な目標がある浦和や川崎はスタートダッシュがうまくいけば、そのまま優勝争いに絡んでくると見る。また開幕戦はつまずいた鹿島と柏も、地力を考えればすぐに立て直してくるだろう。町田はEASTで唯一、25-26シーズンのACLエリートに参加しており、ラウンド16以降の戦いを考えても改めて選手層が問われるハーフシーズンになってくる。鹿島にPK戦勝ちしたFC東京にもチャンスはあると見るが、第2節の浦和戦で真価が問われそうだ。
(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)

河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。





















