神戸復帰を決めた“3つの思い”「僕たちが最年少」 26歳生え抜きの矜持と自負「前線の選手なので」

ヴィッセル神戸でプレーする郷家友太【写真:柳瀬心祐】
ヴィッセル神戸でプレーする郷家友太【写真:柳瀬心祐】

郷家友太は今季仙台から神戸へ復帰した

 今オフにサッカーファンを驚かせた移籍のひとつに、J2のベガルタ仙台から古巣であるJ1のヴィッセル神戸へ4シーズンぶりに復帰した郷家友太があげられる。昨シーズンにキャプテンを務め、チーム最多の10ゴールをあげた26歳は、なぜ生まれ故郷の仙台を離れたのか。郷家が抱く「3つの思い」に迫った。(取材・文=藤江直人)

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 こんな偶然があるのだろうか。青森山田高校からヴィッセル神戸に加入し、5シーズン目を迎えていた郷家友太は2022年9月3日、サンガスタジアム by KYOCERAで行われた京都サンガF.C.戦で先発した。

 そして、0-2で完敗した京都戦が2022シーズンにおける郷家の最後の先発となった。同オフに生まれ育った宮城県をホームタウンとするベガルタ仙台へ完全移籍した郷家は、一度は神戸に別れを告げたはずだった。

 しかし、昨年末になって郷家は4シーズンぶりに神戸へ復帰し、6日のJ1百年構想リーグ地域リーグラウンドWEST開幕戦で先発を果たした。対戦相手は京都。場所もサンガスタジアム by KYOCERAだった。

 実は対戦相手以外にも変わっていない点があった。郷家がこんな言葉を介して決意を新たにした。

「先発のなかで僕たちが最年少になるので。もう若くはないですけど、このチームだと若いほうになるので、僕たちを含めた中堅の選手たちが結果を出して、チームにどんどん勢いをもたらせたら、と思います」

 僕たちとは、1999年生まれのマテウス・トゥーレルと佐々木大樹、そして郷家となる。26歳の3人が最年少だった神戸の先発陣の平均年齢は30.27歳。リザーブには2000年以降生まれの選手は一人もいなかった。

 4年前の京都戦の先発陣はどうだったのか。当時23歳の郷家とトゥーレルより年下だったのは、2000年生まれで現在はポーランドでプレーする小林友希だけ。先発陣の平均年齢は26.73歳だった。

 平均年齢を単純比較すれば、先発陣がほぼそのまま推移して百年構想リーグ開幕戦を迎えた計算になる。

 だからこそ郷家は「このチームだと若いほうになる」と苦笑した。4年前は自身との交代出場でピッチに立った同期の佐々木と、インサイドハーフと左ウイングとで共演した京都との開幕戦。前後半を1-1で終え、百年構想リーグの特別ルールとなるPK戦を4-1で制した試合後。佐々木の名前をあげながら郷家はこう語った。

「お互いが出し手と受け手とになってどちらがゴールを決める、というシーンをこれから出していきたい」

 そして、郷家が意欲をみせたゴールに絡む仕事こそが、仙台での3年間で大きく変わった点となる。

 仙台では右サイドハーフを主戦場としながら、左や状況によっては最前線でプレー。J2リーグで計114試合に出場して25ゴールをあげた。2023シーズンと昨シーズンには2桁の10ゴールをマークしている。

 以前に神戸に所属した5年間は、J1リーグで108試合に出場して10ゴール。中盤のさまざまなポジションで起用されただけでなく、2022シーズンの天皇杯ではサイドバックとしてプレーしている。

 仙台で変わった、と自負する郷家は「自分は前線の選手なので」と胸を張って言い切る。

「特に得点というところは、J2での3年間で自信をつけてヴィッセル神戸に帰ってきました。結果を求められるなかで、仙台で培ってみたものをどんどん出して、J1の舞台でも決め切れる選手になりたい。もちろんゴールだけでなくアシストも含めて、まずは結果にフォーカスして半年間の百年構想リーグを戦っていきたい」

 サンフレッチェ広島の前監督で、今シーズンからは神戸を率いるミヒャエル・スキッベ監督から任されたポジションは前述したようにインサイドハーフ。昨シーズンにチーム最多、リーグの日本人では2位タイとなる11ゴールをマークし、1月にスペイン2部のラス・パルマスへ移籍した宮代大聖が主戦場としたポジションとなる。

 京都との開幕戦では、郷家を除けば吉田孝行前監督体制下の主力メンバーが先発している。つまり郷家のパフォーマンスが、神戸の得点力を左右する。臨むところとばかりに、郷家は新天地での役割に声を弾ませる。

「サコくん(大迫勇也)がどっしりとセンターで構えてくれる分、自分の特長である運動量の多さや背後に抜け出すプレーはこれからもっと、もっと出せると思う。開幕戦では相手ゴール前にいるところや、どんな状況でも走り込んでいくところを出せたと思うので、あとは決め切る選手になるだけだと思っています」

 2022シーズンのオフに、覚悟を決めて仙台へ移籍した。仙台在籍中にはこんな思いも語っている。

「この段階で帰ってもいいのか、という思いもありました。それでも帰ってきたからにはやるべき仕事はひとつですし、クラブの目標もはっきりしている。そのために頑張ろうという気持ちで帰ってきました」

 やるべき仕事とは、2021シーズンを最後に遠ざかっているJ1への復帰。しかし2023シーズンは仙台がクラブ史上ワーストの16位に低迷し、2024シーズンはJ1昇格プレーオフ決勝でファジアーノ岡山に屈した。

 プロになって初めてキャプテンを託された昨シーズンも、最終節でいわきFCに敗れてJ1昇格プレーオフ進出圏外の7位へ転落して終えた。J1への思いが強い分だけ、神戸から届いた望外のオファーに心が揺れ動いた。

 神戸への完全移籍が発表された昨年末。仙台のクラブ公式ホームページ上で郷家はこんな思いを綴った。

「ぎりぎりで上がれなかった2シーズンが終わり、自分の中でJ1への思いがどんどん強くなっていきました。そう思っている自分を止めることができず、覚悟を決めました」

 ファン・サポーターを含めた古巣・仙台へ抱く感謝の二文字を力に変えながら、プロの第一歩を踏み出したもうひとつの古巣・神戸での一挙手一投足に情熱のすべてを注ぐ。ひとつ年下の25歳の宮代が抜けた穴を、再びJ1の舞台でプレーできる喜びとゴールへの貪欲な思いを、プレーと言葉の両方で体現する郷家が埋めていく。

(藤江直人 / Fujie Naoto)



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藤江直人

ふじえ・なおと/1964年、東京都渋谷区生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後に産経新聞社に入社。サンケイスポーツでJリーグ発足前後のサッカー、バルセロナ及びアトランタ両夏季五輪特派員、米ニューヨーク駐在員、角川書店と共同編集で出版されたスポーツ雑誌「Sports Yeah!」編集部勤務などを経て07年からフリーに転身。サッカーを中心に幅広くスポーツの取材を行っている。サッカーのワールドカップは22年のカタール大会を含めて4大会を取材した。

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