欧州初挑戦の日本代表は「スーパーだよ」 同僚が絶賛も…求められる“コミュ力”「すごく良い材料」

ザンクト・パウリの安藤智哉【写真:アフロ】
ザンクト・パウリの安藤智哉【写真:アフロ】

安藤智哉は今冬に福岡からザンクト・パウリに加入した

 J1・アビスパ福岡から今冬ブンデスリーガのザンクトパウリへ移籍した27歳の安藤智哉は、この1か月でチーム浮沈のカギを握る存在となりつつある。

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 デビューは18節ドルトムント戦。後半19分から途中出場すると、アグレッシブな守備で強豪相手に好プレーを披露した。その後、雪で延期となっていた16節ライプツィヒ戦でスタメンデビューを飾ると、20節アウグスブルク戦、そしてドイツカップ準々決勝のレバークーゼン戦と、3試合連続公式戦フル出場を果たしている。

 そのレバークーゼンとの試合では全体的にそこまでの差は感じさせられなかったが、それでも結果は0-3と点差をつけられての負け。試合後、安藤は「課題が多く残った試合だった」と率直に振り返った。

 その言葉の背景には、ドイツのトップレベルと向き合う中で突きつけられた基準の差があった。

「最初の失点とかももったいないといえば、もったいないけど、でもそれで片付けていいのかと思います。どれだけ細かい部分にこだわれるか。ドイツに来て、そういう部分に対して物足りなさを感じることもあります」

 試合の流れを左右するのは一瞬の判断と対応力。クリアの位置やセカンドボールへの反応、奪った後の最初のプレーなどで、試合の流れがどちらに転ぶかに影響を及ぼすこともある。

 この日のレバークーゼンはミスも多かったが、それでもボール保持においても、非保持の局面においても、ザンクトパウリに考える余白を与えないアプローチができるチームだった。安藤もその点を振り返る。

「もう少しボールにプレス行きたかったですけど、ボールを動かすのもうまいチームでした。どこで奪い切るのか、あと奪った後のファーストパスを前につけれたら。チャンスも作れていたので、そういうところが大事だなと思いました」

 手応えはある。前に出てのインターセプト、空中戦、福岡時代に培ったビルドアップの感覚や対人対応はいい。出場機会を重ねる中で、安藤は通用している感覚を掴み始めている。そしてブンデスリーガの舞台では、1対1の強度と連続性がさらに問われる。

「1対1の局面が本当に多い。そこにもっとフォーカスしていきたい。1対1で負けないことが一番大事だと思っています」

 同僚との関係は良好だ。DFハウケ・バールは、1対1で引き分けたライプツィヒ戦後に安藤を次のように称賛している。

「スーパーなプレーだったよ。素晴らしいプレーを見せてくれた。彼が別の大陸から来て、ほとんど言葉もしゃべれないことを忘れてはいけない。でもいつも互いに微笑み合えているし、彼と一緒にいると楽しいよ」

コミュニケーションの問題でスタメンを外れることも

 一方で、監督のアレクサンダー・ブレッシンはドルトムント戦でのデビューを高く評価しつつも、直後のハンブルガーSVとのダービーでは別の選手をスタメンで起用したが、その理由の一つにコミュニケーションを挙げていた。

「ダービーの経験は必要になる。ダービーでは予想もしないことが起こるかもしれない。プレッシャーがかかるダービーのような試合だと、どうなのだろう?我々からのコーチングを理解できるのか?そうした問いと向き合っている」

 守備は個人だけでするものではない。対人に強い安藤は、レバークーゼン戦ではチェコ代表FWパトリック・シックを相手に、多くの場面で食い止めていた。1試合を通してこの日シックが記録したシュート数は2本。だが、そのうちの1本をゴールに沈めている。

 CKからの展開でファーポストに流れ込んだシックがダイレクトボレーで決めたこのゴール。安藤が直接マークをしていたわけではない。だが、リスタートの段階でシックのマークがあやふやで浮いていた。味方とのコミュニケーションをとって、そこは何としてもケアしておかなければならないところだった。

 加入直後の安藤が率先してやらなければならない役割ではないかもしれない。ただ、すでにその能力が高く評価されている点を考えると、仲間や監督・コーチと随時コミュニケーションをとって様々な状況に対応できるかどうかは、ここからの重要なポイントの一つになるし、その役割を担う存在になれるだけの力は持っている。

 トップレベルのチーム、選手と対戦していると、日本では許される一瞬の迷いが、即座に失点につながることもある。安藤自身も、その感覚を日々突きつけられているという。

「自分が成長するためのすごく良い材料。いい経験で終わらせず、どう次につなげるかが大事だと思っています」

 結果としてチームは敗れ、カップ戦から姿を消した。しかし、その敗戦はリーグ戦に集中できる環境をもたらしたとも言える。ザンクトパウリにとって、残留争いはこれからが本番だ。

「守備はチームとして大事にしているところ。まずは失点をゼロに抑える。そのうえで、奪った後のカウンターの精度を上げていきたい」

 その言葉通り、2月7日に行われたシュツットガルト戦ではフル出場して2-1の勝利に貢献。リーグ戦では7試合ぶりの勝利を手にした。

 ドイツに渡って約1か月。試合ごとに突きつけられる基準は、確実に安藤を前に進めている。

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)



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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)取得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなクラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国で精力的に取材。著書に『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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