三笘薫「仕掛ける回数は増えている」 プレミアで復調…完全復活でW杯へ「まずは選ばれること」

ブライトン三笘薫に復調の兆し
「まずはワールドカップに選ばれることと、チームとしてヨーロッパのところをしっかりと狙っていけるように」
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ブライトンの日本代表MF三笘薫は、昨年最終戦のプレミアリーグ第19節ウェストハム戦(2-2)後、2026年を迎えるにあたり力強い言葉を残していた。
代表チームへの思いは、常に誰しもの胸にあるはず。W杯は、代表活動のなかでも最大最高の檜舞台。日の丸を背負う三笘にとっては、スーパーサブ的に名を馳せた前回大会を経て、エース級の存在感を放つべき今夏でもある。先立つシーズン中に、W杯のことを考えるなという方が無理だろう。
「W杯どうこうではない」「そこは全く考えていない」といった発言も、逆に、W杯につながるシーズンであればこそ。事実、「自分がピッチに立つことでアピールしないといけない。そこで出ない限りは選ばれないと思いますし」と説明している。
昨年12月13日の第16節、敵地でリバプールに敗れた(0-2)後のことだった。左足首の怪我から、約2か月半ぶりに迎えた復帰初戦。ファビアン・ヒュルツェラー監督曰く「30分程度が限界」で、本人も「戻さないとチームの力にはなれないかなと思います」というコンディションだった。
それから1か月半が過ぎた1月31日、第24節エバートン戦(1-1)後も、三笘は「(調子を)もっともっと上げていければチームの助けになれる」との自己評価を口にした。
もっとも、これはホームで勝ち損ねた直後、自分に厳し過ぎる一言だ。ブライトンは、後半アディショナルタイム7分に追いつかれた。試合終了の笛が鳴ると、ピッチ上には、思わず両膝を落として俯く三笘の姿があった。アウェイでの前節でも、終了間際の逆転弾でフルハムに敗れたばかり(1-2)。無念の思いが強かったに違いない。
三笘自身は、いずれも先発フル出場。復調途上ながら、第22節ボーンマス戦(1-1)から出ずっぱりの事実が、期待と責任の大きさを物語る。
エバートン戦での90分間を採点すれば、10点満点中6点になる。とはいえ、前半早々3分のクロスで好機を演出したのが三笘なら、両軍無得点だった前半、最も先制に近づいたのも三笘だ。CFダニー・ウェルベックとのワンツーでボックス内に走り込み、2タッチ目で放った左足シュートが、惜しくもファーポストの外へと転がった同19分の得点機。やや巻き過ぎたようにも見えたフィニッシュを確認すると、本人は言っていた。
「そうですね、(ボールを)動かせればよかったですけど、相手のキーパーも良い位置に立っていたので難しかったです」
それでも、ホームの観衆は拍手喝采で三笘のプレーを称えていた。
フルハム戦には、7点を付けてもよい。三笘が追加点に迫ったのは、前半30分。CBルイス・ダンクのロングパスで裏に抜け、秀逸のファーストタッチからシュートに持ち込んで相手GKにセーブを強いた。後半には、追いつかれた2分後に中央をドリブルで上がり、相手DF3人の注意を引きながらデリケートなスルーパス。呼応してネットを揺らしたウェルベックにオフサイドのVAR判定が下ったが、幻の今季2アシスト目には、勝ち越し点を呼ぶに価するクオリティがあった。
復帰後のリーグ戦9試合の中には、三笘のゴールでブライトンが引き分けに持ち込んだ試合もある。スタメンに戻って2試合目の第21節マンチェスター・シティ戦(1-1)。当人は「全然ですね」との低評価で、実際、後半15分の同点ゴールが最大にして唯一の貢献と言えなくもなかったが、見事な一撃必殺だった。左サイドから中央に流れながら、シュートブロックを試みる相手ボランチをGKの反応を遅らせる障害物として利用し、その股間を通してゴール右下隅に決めている。
それだけに、巧妙な今季2得点目も「増強剤」とはなり得なかった、ピッチ上での「自信」が気掛かりだった。復帰後に勝利を納めたリーグ戦は、バーンリーとの第20節のみ(2-0)というチームで、「心」の復調具合は? 先のエバートン戦後に尋ねてみた。
「仕掛ける回数は増えていると思うので、前回もそうですし、復帰したての頃よりはもっと。そこはいいところですけど、そこで行けている以上は自分の責任。チャンスをやり切れるかというところで、 なかなかやり切れていないところも多かったですし、それをやる以上は完結しないといけない」
確かに、本人の言う通り。ボックス内で2度切り返してまで狙ったがシュートを打たせてもらえず、アウトサイドで勝負を挑んでも、止められたりしていた。
だが同じく、「(残り)14試合あるので、まだまだ巻き返せます」とするリーグ状況も、三笘の言う通りだ。エバートン戦で13位へと1つ順位を下げたブライトンだが、欧州出場圏のトップ6を追う第2集団の先頭、7位ブレントフォードとの差は5ポイントに留まっている。
三笘薫がブライトンをトップ6争いに引き上げる存在に
次節は、地元対決ではないが「ダービー」と表現される、宿敵クリスタル・パレスとの一戦。勝てば、チームの士気も俄然高まる。2月半ばに控える、リバプールとのFAカップ4回戦にも同じことが言える。
より注目度が高まるのは、後半に代表ウィークもある3月だろう。プレミアリーグでは、アーセナルとリバプールの両強豪とぶつかるが、どちらも、今季リーグ戦で1度しか負けていないホームゲームだ。その狭間で迎えるサンダーランドとの一戦では、三笘の復調レベルが復帰2戦目だった前回を確実に上回っているはずだ。
こうした試合を通して、チーム最大の武器としての存在感と影響力をも取り戻すことができれば、プレミアリーグでレギュラーを張る日本代表ウインガーとして、胸を張って同月28日のスコットランド戦と、31日のイングランド戦に臨むことができる。そして、英国内でのテストマッチ2試合でも、内容のある戦いに貢献となれば、クラブにとっても、代表にとっても最高のシナリオとなる。
その後の残り2か月弱、トップ6の座を争いながら今季を終えることができれば、ブライトンとしては上出来だと言える。欧州進出が叶わなければ、ファンは期待外れと受け取るのかもしれない。しかし、中立的な立場でものを言えば、ブライトンというクラブは、まだプレミアで「トップ6争い常連」を語るレベルにはないということになる。
筆者は、小綺麗なアメックス・スタジアムでのブライトン戦に足を運ぶ度に、2009-10シーズン終盤の“ホームゲーム”初取材を思い出す。3部リーグ中位対決の舞台となった当時の本拠地は、クラブ専用でないばかりか、サッカー専用ですらなかったウィズディーン・スタジアム。クラブの広報官から、「どうして、わざわざウチの試合に?」と訊かれた。
16年前というと「昔」のことのようだが、125年のクラブ史上では“最近”の部類だ。その「近年」のうち、6位フィニッシュで欧州への切符を初めて手にした2022-23シーズン、チームの主軸にはアレクシス・マック・アリスター(現リバプール)と、モイセス・カイセド(現チェルシー)がいた。今季のチーム戦力も同等とは言い難い。
そのブライトンを、三笘の完全復調がトップ6争いへと浮上させる。現実となれば、最終的に欧州枠を逃したとしても、当人は無念ではなく、仕事をしたとの自負を胸に今季を終え、W杯へと向かうべきだ。
個人的には、そのW杯も、以降への前向きな通過点であってほしいと願う。ブライトンとの契約最終年となる来季は、三笘が30歳になるシーズンでもある。国際舞台でのさらなる活躍は、2度目の契約延長、あるいは国内他クラブからの興味への追い風を生むはずだ。

チームを支える大ベテランの存在
ブライトンには、40歳でプレミア歴代最多出場記録の更新に迫る、ジェームズ・ミルナーという“常緑”の大ベテランもいる。無論、16歳でプレミアデビューを果たしたイングランド人と肩を並べることは不可能だが、まだまだプレミアリーグの実力者であり続けることはできる。
ミルナーが通算650試合目の出場を果たし、記録更新まで4試合と迫ったのは1月のシティ戦。ゴールも決めていた試合後の三笘に、ミルナー観を尋ねると、こう答えてくれた。
「若手のような準備の仕方をするし、常に100パーセントで練習にも取り組むんです。そういう姿勢が多分、40歳までやっている要因かなと思うので、僕も見習わないといけない。僕も六百何十試合も出られるようなフィジカルを持たないとなと思いますね」
今季後半戦でのコンディション上昇が、充実のW杯へと繋がり、さらには“日本人プレミア・レジェンド”への可能性アップへと続いてくれれば、日本人プレミアファンの一人としても嬉しい限りだ。
(山中 忍 / Shinobu Yamanaka)
山中 忍
やまなか・しのぶ/1966年生まれ。青山学院大学卒。94年に渡欧し、駐在員からフリーライターとなる。第二の故郷である西ロンドンのチェルシーをはじめ、サッカーの母国におけるピッチ内外での関心事を、時には自らの言葉で、時には訳文として綴る。英国スポーツ記者協会およびフットボールライター協会会員。著書に『川口能活 証』(文藝春秋)、『勝ち続ける男モウリーニョ』(カンゼン)、訳書に『夢と失望のスリーライオンズ』、『バルサ・コンプレックス』(ソル・メディア)などがある。






















