アーセナル移籍で衝撃「ビクとも」 日本代表が通用せず…伝える経験「銅像が立つぐらい」

稲本潤一FRO「憲剛の隣に銅像が立つぐらいフロンターレを盛り上げていけたら」
1月10日に行われた川崎フロンターレの「2026特別シーズン新加入選手会見&クラブ創設30周年記念事業発表会見」では、あるサプライズが発表された。それが、川崎U-18コーチを務める稲本潤一氏の「Frontale Relations Organizer(FRO)」の就任だ。
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「FRO」といえば、2020年限りで現役引退した中村憲剛氏が2021年から務めてきた役職だったが、中村氏は今季からトップチームのデベロップメントコーチに就任。その活動を稲本氏が受け継ぐ形となったのである。
会見の場に登場した稲本氏はUvanceとどろきスタジアム by Fujitsu(U等々力)に前任者である中村氏をモチーフとした銅像が立っていることを引き合いに出して、「小さくてもいいので、憲剛の隣に銅像が立つぐらいフロンターレを盛り上げていけたら」と意気込んだ。そして挨拶もそこそこに、前FROと同様、水色の洗面器に右足を入れて青いペンキでその場で足型を作って契約書に押す流れに。恒例となりつつある調印式もしっかりと済ませている。
選手として川崎に在籍したのは2010年からの5シーズンになる。日本に復帰する前は長く欧州でプレーしており、2001年にプレミアリーグのアーセナル移籍から始まり、ドイツ、フランスなどで長く研鑽を積んでいた。日本人選手が海を渡って活躍することが今ほど一般的ではなかった時代だ。その意味で、海外組のパイオニアの1人と言える存在だろう。
現役時代にインタビューをした際、欧州での経験を聞かせてもらったことがある。
特に印象的だったと挙げていたのは、最初に移籍した名門クラブ・アーセナル。当時の監督はアーセン・ベンゲルで、世界王者であるフランス代表のティエリ・アンリ、パトリック・ヴィエラ、ロベール・ピレスといった選手も在籍していた時代だった。
世界最高峰の選手達との実力差を練習で目の当たりにし、「想像していたよりも、レベルが全然違いました」と笑って話してくれていた。日本では自分の武器である身体を当ててボールを奪う間合いも、トップレベルではまるで通じなかったという。
「最初にとまどったのはスピードでしたね。Jリーグでは通用していても、アーセナルでは通用しないことがたくさんありましたよ。自分の間合いでもボールが奪えないし、身体をぶつけてボールを奪おうとしても相手の体幹が強くてビクともしない。そこで、より考えていくようになりました」
自分の強みとしていた武器の通じない世界が日常になる。そこに絶望的な気分はなかったのだろうか。意外にも、本人はわりと楽観的だったという。
「そういう明らかな力の差を感じたくて海外に行った部分もありましたからね。ただ想像していたよりも、レベルが全然違った(笑)。でもここでやっていれば、うまくなるというのも感じていたので、楽しさもありましたよ」
真正面から奪いに行っても、まるでボールが奪えない。ならば、違う奪い方に工夫してみたり、自分ではなく味方にボールを奪えるように誘導してみる。そうした彼なりの試行錯誤があったことを明かしてくれたが、重要なのは大きな壁に当たったときに自分なりにどう工夫していくのか。そして、そのトライを楽しむ気持ちなのだろう。こうした姿勢の積み重ねが、もしかしたら、その後の2002年の日韓ワールドカップ(W杯)での大活躍につながったのかもしれない。
「アーセナルではあまり試合に出れませんでしたが、日韓ワールドカップで結果を出せたことは自信にもなりましたし、そこからフルハムに行ったことで、やっていける手応えも掴みました」
現役を引退し、昨年からはクラブでU-18コーチとなり、そして今年からはFROとしての活動もしていくことになる。その稲本FROとしての記念すべき初仕事となったのは、24日のAnker フロンタウン生田で行われた「Jリーグ×小野伸二 スマイルフットボールツアーfor a Sustainable Future supported by 明治安田」だった。
稲本FROはゲスト講師として登場。サステナトークとして気候変動や環境問題をテーマとしたクイズなどを室内で行った後、ピッチに出て子どもたちとのミニゲームを興じて、小野伸二氏とともに盛り上げた。
小野氏と稲本FROの関係は長い。
世代別代表だった時代からの仲であり、ともにW杯には3度出場したレジェンド同士。切磋琢磨してきた「戦友」の間柄で、小野氏が「(稲本FROとは)年末の蹴り納めで一緒にやってましたが、またこうやって一緒にできる。サッカーできるっていう喜びに浸ってます」と評せば、稲本FROも「(小野氏のプレーは)やっぱり惹きつけるものがあるなっていうのは、見てて思いました」と言い、お互いを褒め称えた。
この日のイベントを振り返って、「子どもたちは無邪気なので、すごく突っ込んでくる。ああいう気持ちを僕も忘れずに、もっともっと突っ込んでいこうと思います。無邪気になります」と笑顔を見せつつ、「僕自身がちょっと衰えすぎなんで(笑)。まだ1年なんですけど、こんなに落ちるかと思った。ちょっとトレーニングします」とおどけて報道陣を笑わせていた。
そして今年6月に開幕する北中米W杯に向けては、「半年を長いと取るか短いと取るか。選手たち各々の判断になると思いますが、W杯は4年に1回で、それを目指す選手もいると思うんですけど、その先を目指してやってほしいと思います。選ばれた選手は歴史を変えてほしい」と、日の丸の後輩たちにエールを贈った。
指導者として、そして2代目FROとしての活動に、今後も注目したい。
(いしかわごう / Go Ishikawa)

いしかわごう
いしかわ・ごう/北海道出身。大学卒業後、スカパー!の番組スタッフを経て、サッカー専門新聞『EL GOLAZO』の担当記者として活動。現在はフリーランスとして川崎フロンターレを取材し、専門誌を中心に寄稿。著書に『将棋でサッカーが面白くなる本』(朝日新聞出版)、『川崎フロンターレあるある』(TOブックス)など。将棋はアマ三段(日本将棋連盟三段免状所有)。





















