会長から「アジアの市場を持って来られるか」 日本人がスペイン1部と契約した舞台裏

井手ウィリアム航輔は、スペイン1部レガネスとのプロ契約を勝ち取った
2019年にスペイン1部ラ・リーガのCDレガネスと契約を結んだ日本人を覚えているだろうか。コロナ禍もあって帰国することになったDF井手ウィリアム航輔は、プレーが叶わないまま2020年6月に契約満了で退団。現在は株式会社セガで「サカつく」などの開発に携わる異色のキャリアにインタビューで迫った。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・工藤慶大/全5回の3回目)
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LAギャラクシーのアカデミーで育ち、アメリカを飛び出してドイツで奮闘を続けていた井手。ドイツ4部などでプレーしたが、「とにかく状況を変えないといけない、好転させないといけないなと思ったときに、アメリカの頃からの知り合いがいて」と伝手を頼りにスペインでのトライアウトに自腹で参加する。
当時スペイン1部(現在は2部)だったレガネスのトライアウトで、井手はDチームの練習に参加。レガネスにはトップのAチーム、U-23の若手有望株を集めたBチーム、現地のアマチュア選手が主に所属しているCチーム、お金を払えば誰でも入れるサッカースクールのようなDチームと、4カテゴリーが存在した。
「Cのトライアウトを受けさせてもらえて合格できて、そこで初めてレガネスとの(アマチュア)契約を勝ち取りました。CのなかでもうまければBのトレーニングもやらせてもらえるよと。そしてBで練習をしているとき、当時の会長だった人が練習を見に来ていて『日本人がいる』と話す機会をもらいました」
ドイツではプレーを見てもらう機会を得られず苦しんだだけに、千載一遇のチャンスだった。「ここを逃したら次はない」との危機感を持ち、トライアウトやトレーニングで猛アピールを続けていた井手。その姿とプレーの質はクラブスタッフに高く評価されていただけではなく、会長の耳にも届いていたのだ。
そしてもう1つ、当時のスペインでは多くのクラブがアジア市場への参入を狙っており、レガネスも例外ではなかった。「お前と契約したらアジアの市場を持って来られるか」との会長からの問いに、「絶対にできます」と即答した井手。このような経緯もあって、2019年2月にプロ契約を交わすことになった。
ドイツ4部からスペイン1部とのプロ契約という飛躍を遂げた井手だが、「絶対に通用する自信がありました」と振り返る。「環境を勝ち取れるか勝ち取れないかの違いだと思っています」と言い、努力次第では「どれだけ下手でもその環境でプレーをし続けたら、そのレベルまで成長するんですよ」と断言する。
「僕はそこを勝ち取るために、どう自分が振る舞えばいいか、どう考えて行動すればいいかというステップで、他の人より考え方がうまかったというか長けていた。他のサッカー留学生が考えられないことを考えることができたというのがプロになれたきっかけだと思うし、もちろんプレーの自信もありました」
このニュースは日本のスポーツ紙などにも取り上げられ、「東京五輪の秘密兵器」として井手の知名度も急上昇。「僕も東京五輪に出たい気持ちはもちろんありましたし、日本で開催されて、自分が選手としての価値をすごく高められる機会だったので、自分のなかでも目標の一つとしてありました」と明かす。
「日本人として親に育てられたので、日本人としてサッカー選手になりたかったという気持ちがずっとあって。Jのユースとかに入っていなくてもプロになれる道があると体現できると思って。こういう道もあると自分で活躍して見せたかったという気持ちはずっとあったので、日本代表になりたかったですね」
井手ウィリアム航輔の名前は森保一監督の耳にも入っており、練習の視察に来てもらえるという話もあったという。意気揚々とスペインでの2019-20シーズンに突入するはずだったが、様々な問題もあって約半年の出遅れ。ようやく合流できるかという矢先に、世界を襲ったパンデミックの足音が近づいていた。
(FOOTBALL ZONE編集部・工藤慶大 / Keita Kudo)



















