3年生になった昨年得点王「少し怖いくらい」 3回戦敗退も…卒業まで加速する成長曲線

3回戦で敗退した堀越高校【写真:スポーツ報知/アフロ】
3回戦で敗退した堀越高校【写真:スポーツ報知/アフロ】

堀越の佐藤実監督「これを乗り越えたら違う世界でサッカーができるんじゃないかな」

 選手主体のボトムアップ方式を貫き3年連続して全国高校選手権に臨んだ堀越だが、鹿島学園の茨城旋風に吹き飛ばされ3回戦で敗退した。過去2年間がベスト4、ベスト8と続き、選手たちもそれを超えて国立でも勝ち進むことを目標に掲げていただけに、佐藤実監督も「東京代表として出場するからには、そのくらいのインパクトを残し夢を与えなければ」と、最後は自らにも向けて厳しい言葉を残して去ることになった。

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 しかしむしろ堀越サッカー部の置かれた環境を考えれば、ここまで継続的な成果を挙げている方が奇跡的で、それこそがボトムアップ方式ならではの成果と見ることもできる。例えば3回戦で対戦した鹿島学園は、ピッチに立った14人中過半数の8人が大阪のJアカデミー出身者で、ゴールマウスを守るのは年代別のタイ代表選手。

 非常に興味深い試みではあるが、鹿島という場所に楽しみな素材を集結させ、U-18ではプレミアEASTに次ぐ関東プリンスリーグで戦ってきた。一方、堀越は全員が自宅から通学しており、T1リーグが主戦場だ。もちろん全国には多くの格上チームがあり、都内でも東京都予選の準決勝で対戦した帝京は2025年度の関東プリンスを制している。

 興味深いのは、毎年描き出される夏から秋、さらには選手権本番を迎える冬にかけての急激な成長曲線だ。堀越の佐藤監督が、選手たちに主導権を渡し現行のボトムアップ方式への移行に踏み切ったのは2012年のことだった。それから8年後には29年ぶりに全国選手権への出場を果たすと、以来2022年に塩貝健人(現NECナイメヘン)を擁す国学院久我山に敗れた以外は、6年間に5度も激戦区東京を勝ち抜いている。

 だが反面この間、夏のインターハイへの出場はなく、T1リーグでも優勝したのは1度だけだ。2025年度のチームもT1リーグは4位に終わっているが、選手権の予選に入ると準決勝では帝京に2-1で競り勝ち、決勝では近年ライバル関係にある国学院久我山に7-2と大勝した。

 また選手権本番に入っても、直近の5大会で初戦敗退は1度もなく、2025年の初戦(2回戦)でも三重県代表の宇治山田商を9-0で一蹴した。ちなみに宇治山田商の古西祥監督は「三重県全体のレベルアップを」と話していたが、実は堀越の佐藤監督が最初にボトムアップへの手応えを感じたのは、練習試合で同じ三重県の四日市中央工に善戦できたときだった。佐藤監督は語る。

「我々のチーム作りは、選手たちがエラーを起こし、それを削ぎ落していく作業になります。選手たちは互いに話し合い、我々スタッフも彼らの悩んでいることに向き合い、丁寧に削ぎ落していく。そこで生まれるエラーは決して無駄ではなく必要なものなんです。もし(トップダウンで)最初から進む方向が定まっていたら、こういう夏以降のギアの上がり方はしないのかもしれません」

 選手主体でスタッフの協力を得ながら、トライ&エラーを繰り返す。そう考えれば、春から夏にかけての期間は、まだチーム作りの助走段階で、逆に方向性が導き出され全体に共有されてからは爆発的な躍動が生み出さていく。そしてそのサイクルは、10番を背負い主将として戦い抜いたFW三鴨奏太の3年間の成長にも描き出されている。

「高校生がそこまでチームにベクトルを向かられるのか、と少し怖いくらいに浮ついた感情がない。昨年までは攻撃を起こす選手だったけれど、今年は守備の切り替え、強度などをかなり意識し、一方でチーム全体に気配りもできている。重責で追いつめてしまっているのかもしれないけれど、これを乗り越えたら違う世界でサッカーができるんじゃないかな、とも見ています」(佐藤監督)

 2年生だった2024年度の大会では得点王に輝いた三鴨だが、実際3年時はハードワークができるファンタジスタとしての総合力を明白に引き上げていた。成長曲線が卒業まで加速していくのがボトムアップ方式の特徴かもしれないが、佐藤監督はさらに続けた。

「卒業してからも、ここでやってきたことをそれぞれの場所でつなげてくれている。それがすごく良いなと思います」

 日本サッカーの父デットマル・クラマーは言った。

「サッカーは子どもを大人に、大人を紳士にする」

 高校生に自立を促す堀越の指導法は、原点の真理を的確に適えているのかもしれない。

(加部 究 / Kiwamu Kabe)



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加部 究

かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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